327経営デザインシート2版
生産技術関連のコンサルティング業務を進める中で共通的に感じることの1つに、経営層と製造現場との思いに乖離があることです。製造部門において自律的に改善活動を進める場合には大きな問題にはなりませんが、革新的なプロジェクトを立ち上げる場合には、経営層と製造現場の思いが一致していないとうまく推進ができません。経営層は投資とリターンの思考、製造現場は技術思考になりがちです。下記の経営デザインシートはその思いを一致させるツールだと思います。
先日、日本技術士会の講習会に出席しました。講習会のテーマは「経営をデザインする」でした。ご存じの方も多いと思いますが、内閣府の直下の組織に(一社)日本知財学会なるものがあります。その中の研究会の1つである経営デザイン分科会の活動の紹介でした。
この分科会では現在「経営デザインシート」の普及に力を注いでいます。このデザインシートは、言わば会社組織の長期計画を作成するツールです。今後、日本が目指す社会の1つに「価値デザイン社会」があると見据えて、それに適応した長期計画を作成するツールであるとのことです。概要は下記の通りです。
<需要と供給の環境変化と経営をデザインすることの必要性>
1985年当時は、よいものを作れば売れる 供給<需要 の環境であり、市場を維持、確保する大規模な製造設備などの、有形資産が価値の源泉でした。冷戦崩壊による軍需技術、予算の民間への開放、世界市場への東欧、中国などの参入に伴い、供給力のブレークスルーが始まりました。21世紀に入り、供給力のブレークスルーが進んだ結果、 供給>需要 へと変化し、新技術、新製品でも選ばれなければ売れない状況になりました。これに伴い、ノーズやウォンツに接近する価値を生み出す仕組み、データ等の無形資産が価値の源泉となってきました。
<経営デザインシートの概要>
100文字で言うと、環境変化に耐え抜き、持続的に成長するために、A自社や事業の存続意義を意識した上で、B「これまで」を把握し、C長期的な視点で「これから」のありたい姿を構想します。Dそれに向けて今から何をすべきかの戦略を策定します。
Aは企業の理念・事業コンセプトを事業概要・経営方針と関係させてまとめていきます。
・事業概要…事業のビジョン、事業のコンセプト、事業が解決しようとする社会的課題、事業目標、KPIについて記載する。
・経営方針との関係…事業が経営に対して果たす意義、コミット内容を記載する。
Bはこれまでの価値創造のメカニズムについて、資源→ビジネスモデル→価値に順にまとめます。
・資源…事業において重要な資源について記載する。(内部資源、外部資源)
・ビジネスモデル…資源をどのように用いて価値を生み出してきたのか。
・価値…提供してきた価値、事業を通じて何を社会や顧客に提供してきたかを記載する。
Cはこれからの価値創造メカニズムについて、価値→ビジネスモデル→資源の順にまとめます。
・5年後、10年後を見据えて記載。価値(ありたい姿)から記載することでビジネスモデル、資源を考える。
Dは「これまで」から「これから」へ移行の戦略について記載します。
・これからの外部環境と移行のための課題…市場予測± 将来の環境変化を予想して記載する。
・必要な資源と解決策…これからの姿を実現するために、必要となる資源をどのように調達するかを記載する。
以上をA3 1ページにまとめます。
今後、このシートを各企業コンサルの共通ツールとして活用して行きたいと考えています。
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