326位置合わせ技術

 自動組立において基本となるのが位置合わせ技術です。現在は一般的にカメラを使ったものが主流ですが、その他にも治具を使ったものや、ワークを探索する方法やセルフアライメントなどがあります。ここでは、過去の経験に基づいてこれらの技術を記載します。

 組立(実装を含む)とは、組立される対象物(ワーク)に対して部品(パーツ)を組付け、挿入、設置することです。そしてパーツはワークが求める正しい場所にあることで価値が生まれます。これを実現するのが位置合わせ技術です。

<カメラを使った位置合わせ例>

 ロボットを使った多機能組立システム(※1)の場合、2台のカメラを使います。1つはワークの位置を検出するカメラでワークを上から撮像します。もう一つはパーツの位置を検出するカメラで、ロボットが把持したパーツを撮像します。本システムの場合は下からです。最初に、ワークがロボットの作業エリアに搬入され固定され、組付けされる場所をカメラで撮像し対象となる箇所の位置を認識します。ここで基準位置との誤差を計測します。続いてロボットはパーツを把持して、下カメラの場所へ移動します。撮像されたパーツの位置と基準位置との誤差を計測します。ロボットはワークとパーツの誤差をキャンセルするように移動して、組付けします。この方式は、ワーク、パーツが持っているバラツキ、機構、ロボットのバラツキをキャンセルできます。

※1 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja

<治具による位置修正例>

 まだ、カメラが普及していない時代には、位置修正治具を使いました。加速度センサやジャイロセンサなどを実装組立するマイクロアセンブリマシン(※2)の場合、パーツの位置姿勢を修正する治具は、基準の2面に2つのプッシャーでパーツを押し付ける方式でした。ラフに位置決めされた部品トレイから、直交ロボットがパーツを掴み、修正治具に置きます。修正後に再度ロボットで掴み直す直し、ワークに実装しました。この方式の場合には、ワークのバラツキをキャンセルすることはできませんでした。

※2  https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol56-6/paper08.pdf

<レーザーセンサーによる位置探索例>

 マトリックスボードと接続ピンを使った電話線の接続切断装置(※3)の場合は次の通りです。①本局からリモートで配線接続指示が出るとロボットが起動します。②ロボットはフレームの片隅に設置された接続ピン供給専用のマトリックスボードから1本取り出します。③指定されたマトリックスボードの指定のスル―ホールへロボットが移動します。マトリックスボードの表面には縦横にパターンが敷かれていて、ロボットは、そのパターンをレーザーセンサーでトラキングしながら指定のスル―ホールまで移動します。④把持している接続ピンをスル―ホールに挿入します。以上の方式に場合、パーツのバラツキをキャンセルすることはできませんでした。しかし接続ピンを把持する機構にはコンプライアンス機能があり、位置合わせがずれていても、スル―ホールに倣ってピンを挿入することができました。

※3 https://shimamura-engineering-hp.amebaownd.com/posts/10204061

<物理現象を応用したセルフアライメント例>

 プリント基板に電子部品を実装するSMTライン(※4)には、はんだ印刷工程、チップ部品の搭載工程、リフロー工程、外観検査工程、などがあります。チップ部品が搭載されたプリント板をリフロー炉に通します。炉の熱によりクリームはんだが溶けて、チップ部品とプリント基板が溶着されます。興味深いのは搭載されたチップの位置が多少ずれていても、溶融はんだが持つ表面張力で正しい位置姿勢に矯正される点です。いわゆるセルフアライメントです。この方式の場合、ワーク、パーツが持っているバラツキ、機構、ロボットのバラツキをキャンセルできます。

※4 https://shimamura-engineering-hp.amebaownd.com/posts/10882894

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