310データ活用の取組み(その4)
過去にデータを活用して製造ラインの品質の改善に取り組んだ経験があります。1つには「SMTラインの頻発停止改善」2つには「プリント基板スルーホールメッキの品質改善」です。2つの課題の違いにより、使用するデータの属性やデータの処理方法の違いを記載します。
<SMTラインの頻発停止改善>
・対象工程:ハンダ印刷→ハンダ検査→チップ実装→実装検査→リフロー炉→AOI
・使用データ:設備ログデータ/エラーログ、イベントログ(供給、段取り、調整など)
・データ処理分析:紐付け→クラスタリング(K平均法)→決定木→エンジニアリング分析
クラスタリングとは:サンプリングデータの特徴に合わせて、自動的に指定されたクラス数に分類します。クラス分けされた各サンプルの特徴を見て、目的変数と明らかに関係のないものを排除します。1回目のクラス分けをばらばらにして2回目のクラス分けを、同じ様に自動的に行い関係のないものも排除します。以上を繰り返し必要となるサンプルを限定していきます。要因を特定するため、前記の限定されたサンプルを使って決定木分析を行います。以上までが、データサイエンティストの分析範囲です。
特定された要因の真因を解析するため、エンジニアリング分析を行います。エンジニアリング分析では要因となったもの(この場合はチップ)を観察して原因を探ります。この事例では電子顕微鏡でチップを観察しました。その結果、通常では直方体であるべきチップが、かまぼこ型をしていました。その結果、ロボットハンドで安定した吸着把持ができなかったため、エラーが頻発していたという結論でした。
<プリント基板スルーホールメッキの品質改善>
・対象工程:内層パターン〜積層→穴あけ→スルーホールメッキ〜表面処理〜検査
・使用データ:メッキ槽の温度、流量、電流、濃度とメッキ断面レベル(クーポン)
・データ処理・分析:紐付け→機械学習(ランダムフォレスト)→予測モデル作成
通常、現場ではリアルタイムデータを使って、設備の状態を安定化させます。しかし、突発的な製品歩留まりの低下などには対応できません。また、製造リードタイムが長い場合はチューニングを行っても、その結果が適切であったかどうかのフィードバックがすぐにはできません。そこで、予測情報が必要となります。予測情報を得るためには、AIシステムを導入します。
AIシステムでは、過去の製造データと検査結果のデータを使って、機械学習します。日々収集されるデータをサーバに蓄積します。1月分、半年分などある決まった期間の製造の状態を基に機械学習することで、予測モデルが生成されます。リアルタイムデータを予測モデルへ入力すると品質予測値が出力されます。この値を現場では、日々の品質安定化業務へ取り入れることで、未然に不良を防ぐことができます。課題はその予測値の精度向上です。精度を向上する決め手は、いかに信頼性の高い多くのデータを収集できるか、いかに正確にデータの紐づけができるか、です。
<データ活用の共通課題>
データ活用の共通課題は、いかに信頼性の高い多くのデータを収集できるか、いかに正確にデータの紐づけができるか、です。
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