311セレクトショップとエンジニアリング
『セレクトショップは、メーカーやブランドにこだわらずに良品を目利きし、客に提案する。客は、メーカーやブランド以上に、セレクトショップのセンスや「このセレクトショップが扱っている」という事実に価値(あるいは付加価値)を見出している向きが色濃い。いうなればセレクトショップは小売店にブランド価値があるわけである。』
実用日本語表現辞典より抜粋
以前、生産技術の自動化設備の設計部門では、世の中に1つしかない設備を、ねじ、歯車、ばねといった機械要素設計から機構、構造を設計し、それを制御するためのリレー回路やシーケンサープログラムの設計をしていました。
時代と伴に機械要素は購入品へ、回路要素もパワーユニット、サーボユニットなど購入品で賄えるようになりました。さらに最近では、1軸タイプのロボットを購入し組み合わせることで、組立設備の大半ができてしまいます。設計らしい設計はワーク、パーツを把持する部分ぐらいです。おかげで、短期間に設備を提供できるようになりました。
一方、「ロボットユニットを購入するからロボット設計はもうやらなくてもいい」、という考えを持つ人もいますが、これは間違っています。購入品を使用するからこそ逆に、ロボット設計ができないといけないと思います。
市販のロボットユニットは標準化されています。サイズ、出力が段階的に用意されています。決して、無段階に選択できるものではありません。設計者は設備がちゃんと動作しないといけないので、少々出力が大きいものを選択したくなります。これを始めると大変なことになります。
直動型、回転型の1軸ロボットを6台組み合わせれば、6自由度のロボットになります。ロボットを設計する時、最初にどのくらいの質量のパーツをどのくらいの加速で動かす必要があるかを決めます。ロボット先端の軸にちょっと余裕を持たせ、出力の高い1回り大きいユニットを選択すると、次の軸はパーツ+先端軸の質量を考えて選択します。やはり余裕をもって少々出力の高い1回り大きい・・・・・以上を6回繰り返すとぜい肉だらけのロボットになってしまいます。
購入品を使う場合においても、ちゃんと設計することが求められ、購入品に適合するものがなければ、購入品を改造したり、やはり自分で設計したりする必要があります。それが、他社と差別化をする生産技術でありエンジニアリングです。
『メーカーにこだわらずに良品を目利きし、最適な組み合わせとちょっとした工夫で、客に提案する。』そんなセレクトショップのようなエンジニアリングを目指したいものです。
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