292現場は根拠を知りたい
日経XTECHの2021年1月号に「日本製鉄がNEC製AIを採用した訳」についての記事がありました。その中に「現場は根拠を知りたい」との見出しがありました。下記は抜粋です。
例えば、近年は製造業でも深層学習(ディープラーニング)技術の採用が増えているが、一般に深層学習では推論結果の根拠は分からない。画像認識など一部の領域では根拠となった因子を特定する技術も出てきているが、状態監視や異常予兆検出といった時系列データを扱う領域ではほとんど実用化されていないという。
深層学習は、推論精度の高さに定評がある。しかし、どれだけ精度が高くても推論の根拠が分からなければ現場で使いにくいと、日本製鉄情報システム部部長兼デジタル改革推進部上席主幹の中川義明氏は語る。根拠が分からないと、原因特定や再発防止に役立てにくいからだ。その点、インバリアント分析では異常の原因となったパラメーターが明らかなので、そこから原因特定や再発防止につなげられる。「インバリアント分析は、根拠を知りたいという現場のニーズによく合っていると感じた」(同氏)。
以上 日経XTECHの2021年1月号記事より抜粋
以前、あるプロセス工場へ異常予兆検知のAIシステムを導入するため、フィージビリティースタディーをしたことがあります。工場が抱えていた問題は、日々の品質管理をしっかりやっているにも関わらず、年に1回程度大きな品質問題が起きているといった内容でした。製造している製品は、電子製品の基幹部品であるため、後工程のお客様すべてに迷惑をかけてしまうとのことでした。
製造ラインは数十工程におよびます。各工程の管理項目(温度、圧力、電流など)はマニュアルレベルですが見える化がされています。基準値に対するオフセット、バラツキはリアルタイムにチューニングしていますが、工程間をまたぐ、多因子にかかわる問題であると人手では対応できないとのことです。AI技術で不良が出る前に予兆が見えるように、どうにかならないかといった依頼でした。
データ活用の流れは、データ診断、収集、統合、分析、運用といった手順となります。重要なのはデータの診断です。データ診断は2つの作業があります。1つは現状で工場がどのようなデータを持っているかを調べるデータの棚卸と、もう1つが問題となっている事象の要因は何かを知見者たちが分析することです。(要因分析は特性要因図やFMEAといったツールを使うと便利です) 言い換えると、分析の前に知見者たちがいくつかの仮説立て、それを立証していく過程においてAIを活用します。したがって深層学習を含むAIの結果が仮説とマッチすることで、根拠も併せて知ることが出来ます。
いずれの方式においても「現場は根拠を知りたい」を実現することが出来ます。
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