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日経XTECHの2020年12月号に「AIが運転員を模倣、プラントの複雑な工程の自動化に期待」といった記事がありました。下記は抜粋です。
NTTコミュニケーションズ(東京・千代田、以下NTT Com)は横河ソリューションサービス(東京都武蔵野市)と共同で、化学プラントの自動制御が難しい工程に対して運転員のオペレーションを学習・模倣する人工知能(AI)を開発した。運転員によるオペレーションとAIのそれを実証実験で比較し、高い精度での両者の一致を確認したという(図)。将来は、同AIによる化学プラントの運転支援と自動化、それらに伴う運転員の省力化、生産の安定化などが期待できる。
新開発のAIは、過去のオペレーションで取得した温度や圧力などのデータと、それを制御する運転員の操作履歴を教師データとする模倣学習によって開発した。この模倣学習は、過去のデータさえあれば、複雑に状態が変化するプラントにも適用できるという。システムによる自動制御が難しく、従来は運転員によるオペレーションが不可欠だった工程の運転支援が可能になる。
多くの化学プラントは、温度や圧力が複雑に変化するため自動制御が適用できず、運転員によるオペレーションが不可欠な工程が存在する。一方で、運転員を確保しにくく技能継承が十分にできない、高度なスキルが必要でオペレーション品質にバラツキが出る、といった課題もある。新開発のAIは、こうした課題を解決し、少ない運転員で安定してプラントを運転できるようにするものだ。
以上 日経XTECHの2020年12月号記事より抜粋
上記抜粋の中で「運転員の操作履歴を教師データとする」といった点にこのAIの特徴があると思います。一般的に人の操作履歴が時系列で残っていることはまれであり、当初から計画の中に組み込まれていなければデータの収集は難しいと思います。しかし、人が操作するきっかけとなるデータを収集することはできます。設備が保有している稼働データ、エラーデータ、イベント情報などです。人は稼働データを見てメンテナンスを行います。エラーデータを見て設備を止めます。部材供給イベント、段取り替えのイベントなどの情報で行動を起こします。
以前、SMTラインの設備のチョコ停をビッグデータで分析したことがあります。その工場にはSMTラインが全部で9ライン稼働していましたが、1ライン当たりチョコ停で1日1時間ほどの停止が発生していました。工場全体では8~9時間停止している計算になります。言い換えると1日1ラインが稼働を停止していることになります。
原因分析の依頼を受けた生産技術部隊は、当時バズワードになっていた「ビッグデータ」を使って分析を試みようと考え、データサイエンティストと協力してプロジェクトを立ち上げました。先入観、既成概念、様々な予見に左右されないように、現場の知見を入れることなく、データから見えてくるもののみで分析を進めることを方針としました。当時SMT設備が保有しているデータは稼働データ、エラーデータ、イベント情報などが主でした。対象となっていた工場は、データの管理が一元化され整理されていたこともあり、サイエンティストが要求する形式でデータを提供できていたと思います。
分析の結果、あるチップ部品の形状が当初想定していたものと違っていたのが原因でした。そのためロボットのエンドエフェクタ(吸着コレット)で安定して部品を把持できず、チョコ停が発生していたのです。分析には多くの時間と工数がかかりましたが、原因の一つを突き止めることが出来ました。
本事例と抜粋記事の例とは、目的が違います。が、データを活用した取り組みとして、人の行動に関係するデータの収集は物理データの収集と同様に大切であると言えると思います。
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