288レトロフィット技術(その5)
日経XTECHの2021年1月号に「アナログ制御盤をAI画像処理で数値化、市販Webカメラと格安PCで安価に」といった記事がありました。下記は抜粋です。
最初に取り組んだのは、ショットブラスト設備の制御盤のランプの読み取りだ(図4)。この制御盤には、同設備の3つの扉およびブラスト材を供給する5つのホッパーの稼働状況を示す表示灯がある。これをカメラで撮影しデータ化している。
「まずはちゃんと動いているかどうかを知りたかった」。栗田産業IoT推進室主任の森下篤史氏はこう語る。実は、同設備は機械的・電気的トラブルでときおり止まってしまう場合があるが、常時誰か張り付いて監視しているわけではない。制御盤は設備の高所にあって、見に行くために狭い階段を往復しなくてはならない。こうした事情もあり、事後になって「実は止まっていました」といった報告が、生産管理業務を担っていた森下氏のところに現場から上がってくることがしばしばあったという。そうなると生産計画が狂い、納品にも影響する。
そこでレトロフィットIoTで制御盤の情報をオフィスからでも見られるようにした。具体的には3つの扉と5ブラストのホッパーの動きを示す表示灯を10分に1回撮影し、オン/オフで2値化した。やってみて分かったのは制御盤のある部屋の照明の点灯状況によって画像には大きな違いがあること。周囲の環境に左右されずにオン/オフを判定するために、点灯している表示灯の緑色の色成分だけを抽出し、その成分量を評価している。
これにより現場に行かなくても稼働状況を把握できるようになった(図6)。操業時間帯に一定時間稼働していない場合は、自動的にアラートのメールが送られてくるため、すぐ異常に気づける。現場の作業者も制御盤を見るために細い階段を日に何度も往復する必要がなくなった。
以上 日経XTECHの2021年1月号記事より抜粋
以前AMR(Analog Meter Recognizer)について紹介してきました。工場内には何百何千に上るアナログメーターが存在し毎日毎時、作業者がそれを読み取り、そのデータに基づいて設備のチューニング、材料・薬品の投入が行われます。すなわち、品質管理に必要な物理情報をセンシングした結果がアナログメーターに表示されています。AMRはこのメーターをカメラで読み取りデジタルデータに変換し、統一データ形式で出力します。どこのメーカーのどの種類のメーターであっても同様に取り扱うことができることも、重要な特徴の1つです。
AMRを使うことで旧設備の多いプロセス系工場において、設備を停めることなく、メーターのメーカーや種類に依存することなく、ゲートウェイを用いることなくシステム化することができると思います。ただ、AMRはカメラで撮像しなければならないので、工場の環境(照明の変化や振動など)によるノイズ成分に対して工夫する必要があります。
冒頭の記事の中では、「周囲の環境に左右されずにオン/オフを判定するために、点灯している表示灯の緑色の色成分だけを抽出し、その成分量を評価している」とあり、照明環境に対しての工夫がされています。
振動に関してはどうでしょうか。工場内には様々な振動があります。カメラを取り付けているブラケットがその振動により微妙にずれることがしばしば起こります。AMRの場合、アナログメーターの針の位置を教示してその動きを計測します。そのため、カメラを取り付けているブラケットが振動でずれてしまうと計測できなくなります。
この問題に対応するため、対象となるアナログメーターに基準マークを貼り付ける方法をとっています。直径5mm程度のシールをアナログメーターの周囲に4つ貼付けます。カメラで最初にその基準マークを読み取り、メーターの座標系を作ります。次にその座標系を基準にしてアナログメーターの針の位置を教示します。振動で位置がずれても、最初に基準マークを読み取り、座標系をキャリブレーションすることで、針を読み取ることができます。
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