287レトロフィット技術(その4)
日経XTECHの2020年12月号に「投資対効果は150倍、京セミが驚異のレトロフィットIoT」といった記事がありました。下記は抜粋です。
京セミがIoT化の対象として最初に選んだのは、成膜工程のプラズマCVD(化学蒸着)装置である。同装置は、薄膜構成原子を含む化合物ガスをプラズマによって解離・イオン化し、基板(ウエハー)に吹き付け、基板表面上での化学反応を利用して絶縁薄膜を形成する。半導体製造の主に前工程を手掛ける同社恵庭事業所(北海道恵庭市)において、25年以上にわたりほぼ毎日稼働している装置をIoT化した。
生産性向上や異常検知のために必要なデータは、「装置内ガス流量」「装置内圧力(真空度)」「高周波電源出力」「ポンプ負荷」「供給ガス圧力」「供給ガス残量」などである。
〜中略~ 従来、これらのデータは、そもそも計測していない、または計測していてもリアルタイムで活用できない状況だった。リアルタイムで活用できないのは、アナログ計測器の表示を人が目視で書き取っていたり、データをフロッピーディスクに保存していたりしたからだ。
従って、故障などの異常を事前に予測できなかった。プラズマCVD装置が故障した場合、高価なカスタム部品を交換しなければならない。高価なのであらかじめ部品を潤沢に用意しておくのも難しく、どうしても実際に故障してから部品を手配することになる。そのため、稼働再開までに時間がかかっていた。
〜中略~ センサーによっては、生データのままではIoTプラットフォームに送信できないものがある。これには、オープンソースのボードコンピューター「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を活用した。センサーとゲートウェイ機器の間にボードコンピューターを置き、送信可能な形式に変換している。データ変換用のプログラムは、京セミの社員が作成した。
以上、抜粋記事より
№062のレトロフィット技術の中で紹介したAMR(アナログメーターレコグナイザー)を使うといった考え方もあると思います。AMRは旧式設備のアナログメーターをカメラで撮影し、デジタルデータ化して統一データ形式で出力します。それがどのメーカーの円形針メーターであっても、7セグ表示器であっても、フロートメーターであっても同じ形式で出力されます。言い換えれば、設備メーカーや、設備の新旧に依存することなく必要なデータを収集すれば、統一データ形式でデータベースに格納できることになります。ゲートウェイの機能は必要なくなります。
AMRはカメラでメーターを撮影しなければいけないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分)に対して工夫する必要があるなどの課題はありますが、本ブログ№279「レトロフィットとAI技術」で記載したように、環境変化に対してもAI技術を使って対応する取り組みが始まっています。AMRは合理的なデータ収集ツールであることには間違いないと思います。
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