286標準作業と工程能力

 「トコトンやさしい品質改善の本」日刊工業新聞社発行には、標準作業について次の様な記載があります。

 標準作業は良い品質のモノを安くつくっていくための道具です。標準作業は人の動作を中心として、ムダを省いて本当の意味での仕事だけ集め、ムダのない手順で繰り返し同じ条件で作業ができるように構成されています。しかも、生産必要数を平準化してつくることを主眼としており、結果として、つくり過ぎを抑制し、ムダな動作などの排除につながっています。

 どんな作業でも標準を決めておくことは大切です。このとき、作業自体がある程度安定した状態になっていないと、標準化は難しく、標準を決めても、実際には役には立ちません。作業の手順や時間そしてやり方が安定していれば、改善を進めた場合、その結果が明確に判断できます。しかし、標準がないと、改善結果の判定が難しいことになります。

 標準作業は効率よく生産性得緒上げるための諸条件を考慮して、人と機械とモノを最も有効に組み合わせることが大切です。標準作業を設定する人は、監督者であり、維持・改訂も監督者です。これには監督者の意志が盛り込まれています。標準作業は改善の原点であり、諸条件の変化で改訂されます。

 標準作業を作成するための条件は、次の2つです。

①人の動作を中心に考える

②繰り返し行う作業であること

機械の条件にしばられるのではなく人中心とします。標準作業を構成する3要素にはダクトタイム(1個秒でつくるか)、作業順序(作業していく順序)、標準手持ち(工程内の最小仕掛品)があります。~以下略~

 「トコトンやさしい品質改善の本」日刊工業新聞社発行 より抜粋

 現在、IoTの導入に取り組もうと考えている製造工場が増えてきています。受注調達、品質改善、設備保全など幅広く展開できるのがIoTです。ここでは製造工程における品質改善について考えてみます。

 過去に何回か製造データを活用した品質改善の取組みを行ったことがあります。いずれも、自動化設備から取り出すことができるデータ(たとえば温度、圧力、電流値、濃度などの物理データや設備エラーやイベントデータ)でした。対象はプロセス系工場、自動化が進んでいる実装工場でした。品質の指標の1つとして各工程の管理項目の工程能力があります。温度、圧力などの管理対象に関係なく数値で表される指標です。たとえば数値が1.00であれば限界値を外れる確率は3/1,000、数値が1.33であれば限界値を外れる確率は60/1,000,000です。この数値を指標として工場改善のPDCAを回すことが出来ます。数値が良くないということは、不良(ロス)が多いということになります。

 一方で、人手作業中心の組立系の工場の場合はどうでしょうか。たとえばある精度に組立をしなければならない場合、基準精度に一発で入っても、数回やり直しして入っても品質上は同じです。しかし、冒頭の標準作業の時間を逸脱している可能性があります。時間がかかれば、1日の生産量が減ります。これもロスが多いということになります。

 組立系は人手作業が多く、IoTを進めるに当り、どのようなデータを取ればいいのかと悩まれる人がいます。その場合には、標準作業にかかる時間をデータにすれば良いと思います。難易度の高い組立はバラツキが多いはずです。ベテランと若手でも変わります。判断指標は工程能力です。

 さらにIoTの次にはAIがあります。AIによる機械学習で作成される製造プロセスのモデルから、品質予想やプロセス条件の最適化へと展開されます。人手作業工程のデータとして作業時間を活用することを検討してみたらどうでしょうか。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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