283仮説と検証
「技術を持つ人だけが、価値を提案できる」といた記事が日経XTECH 12月号に載っています。筆者はDX研究の澤谷教授です。その中で仮説と検証の大切さについて記載されていました。下記は抜粋です。
企業内での評価とか、教育とかで、数値を重んじすぎるのも問題だと思います。今は、企業の中ではデータを持ってきなさいとすぐ上から言われます。数値で示さないと意味がないなどとされますが、それが成立する環境がどういうものかを考えてみていただきたい。データを取れて分析が有効なのは、過去からあまり変化がないからです。
この産業は昨年こうで、一昨年以前もこういう傾向だったから、来年はこれぐらいになるだろうと大体分かるのは、その産業が以前から存在しているからです。しかし、これまでにない産業がどんどんできてくる時は、過去のデータがないから、分析もできません。
なので、分析的なアプローチだけではなく、学びながら、走りながら実行してみるというように思考を変容させる必要があります。デザイン思考が大切といわれるのもその表れです。データがないから、とりあえず自分で仮説を作って実行してみる。仮説を検証していくのは科学の基礎ですから、科学的な試行錯誤は非常に重要だと思います。そこではインタビューとか、人の思いへの共感だとか、定性的な情報が大変重要になります。
以上 日経XTECH 12月号 記事抜粋
以前、データ活用による品質改善に取り組んだことがあります。製造工場の中には多くの製造データが存在しますが、十分に活用されないまま蓄積されています。これを活かして製造品質を向上させようといった趣旨で取り組みました。データには当初必要と考えられたもの、製造途中で品質不良が発生してセンサーを追加して採ったデータなど様々で、今となっては本当に必要なのかわからないまま採っているデータもあります。一方で、採らなければならないデータがないといったことも発生しています。
データ活用を推進するにあたり、データ診断、収集、統合、分析、運用といった手順が考えられます。中でも、データ診断はデータの棚卸と要因分析があり、最も重要なプロセスの1つと考えられます。
たとえば、プリント基板製造におけるメッキ品質の改善について考えてみます。メッキ生成の工程は数多くありますが、代表的な管理項目に電流、温度、濃度、時間があります。品質を阻害している要因として電流を主体に考える仮説、温度を主体として考える仮説、同じく濃度、時間を主体として考える仮説、これらの組み合わせで考える仮説など、多くの仮説が考えられます。そこで、プロセス設計者、メッキの知見者、製造現場のスタッフからヒアリングしたり、ディスカッションしたりして重要度の優先順位を付けます。並行して各仮説に必要なデータが揃っているかを確認します。
以降は優先順位に従い各仮説を検証していきます。各仮説のデータを統合して機械学習をしてモデルを作成し、そのモデルの信頼性をチェックします。チェックにはモデルの信頼性を表すR2値を使います。目標とするR2値に達成するまで、前記の要因分析と必要なデータの収集を繰り返します。そうして作られたモデルは信頼性の高い品質予測や最適化が可能となり、工場のオペレーションの一つとして組み込まれます。
これはまさに冒頭の記事の中にある様に「データがないから、とりあえず自分で仮説を作って実行してみる。仮説を検証していくのは科学の基礎ですから、科学的な試行錯誤は非常に重要だと思います。そこではインタビューとか、人の思いへの共感だとか、定性的な情報が大変重要になります。」だと思います。
データドリブンといった言葉をよく聞きますが、データドリブンを支えるのは人としての技術者だと思います。
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