277オントロジーとセマンティクス

 ドイツ標準化ロードマップ Industrie 4.0 Version 4解説書がIEC/SyC SM国内委員会から発行されました。「本標準化ロードマップはDIN/DKEおよびドイツ国内の標準化の取り組みを内外にアピール、プロモートする媒体としての役割も担っているが、産業用のIoT活用という視点でドイツ国内や欧州に閉じたものでなく、広く世界に理解と協力を呼び掛けた内容になっている。」「この標準化ロードマップに記載してあることからどれだけ具体的な将来像やユースケースを理解していくかがまず第一歩と思う。」とあります。この解説書の中にオントロジーとセマンティクスについて下記の記載があります。

 昨今デジタルトランスフォーメーション(以下DX)を筆頭として、Digital TwinやIndustrie 4.0など、日々なんだか凄くて新しそうな多くの言葉を目にします。このシリーズでは少し別の角度からビジネスのIT変革を喚起している本質的問題とその解決方法、そして世界の動きを見ていきたいと思います。そのため本記事でのDXは、2004年にストルターマン教授が提唱した定義※1よりも、より広義の意味で使います。

 何が問題となっているのか?結論から申しますとあらゆる事業分野における「情報爆発」です。〜中略~ その解決方法が、オントロジーとセマンティクスです。

 〜中略~ 海外各社が情報爆発に対応するため、従来のように「ただデジタル化する」(これをdigitizationといいます)のでなく、問題の本質に立ち戻って計算機が意味を理解できるように「賢くデジタル化する」(これをdigitalizationといいます)するための取り組みを始めて、実はかれこれ20年くらい※1になります。ところが日本では、未だに「賢くデジタル化する」取り組みが話題にならず、一方でバズワードを追いかけてばかりいるように見えます。

 〜中略~ 一般的なオントロジーとは「もの・こと」の整理のことを言いますが、「賢いデジタル化」に必要な狭義のオントロジーとは、特定の事業分野や目的ごとの言葉を必要十分なだけあげつらって「区分け」し「親子関係・構成関係・その他の関係」で整理する考え方のことで、整理した結果を「オントロジー辞書」と呼び、これを使って実際のビジネスで必要な「様々な情報の塊」(たとえば機器のスペックシート、組立図、購入購買票、あるいは工程表など)の意味(これを「セマンティクス」といいます)を、計算機が理解できるよう形式モデル(RDFやPOMなど)と形式言語(OWLなど)によって構造化します。

 以上 解説書より

 以前、製造データを活用し品質異常の兆候を予測して、不良を未然に改善するといった取り組みをしたことがあります。データの棚卸、要因分析、収集、統合、分析そして運用といった手順で進めました。工場にとって最も重要な点は、予測精度であります。間違った予測値を使ってPDCAを回すことはできません。結局、工場の既存データを組み合わせた分析結果からは、運用に十分な予測精度を得ることができませんでした。

 1つはマニュアルで取得しているデータやトレーサビリティーの信頼性であり、1つは各データの関係性を十分整理されないまま、分析していたことに起因していたと思います。これはオントロジーとセマンティクスに通じるところがあります。

 たとえばメッキ槽の温度を管理する場合、基準値と平均値、上限の限界値があります。さらに偏差や時系列に見た時の傾向も見ることができます。今、製造物の品質を安定化し歩留を向上させコスト削減を図りたいといった最終目的を考えます。各工程の工程能力(Cpk)から算出される不良数の総和(歩留)の情報が必要であることが判ります。工程能力を知るためには、平均値、偏差と基準値、限界値が必要です。平均値と偏差を知るためには、信頼できる温度の生データが必要となります。基準値と限界値はプロセス開発部門の設計値が必要となります。といったように目的に合わせて、データの親子関係、構成を考えることが大切であり、これがオントロジーだと思います。そして、これら管理項目をプロセス順に表現しているQC工程表がセマンティクスなのだと思います。

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