276 Industrie4.0と人

 ドイツ標準化ロードマップ Industrie 4.0 Version 4解説書がIEC/SyC SM国内委員会から発行されました。「本標準化ロードマップはDIN/DKEおよびドイツ国内の標準化の取り組みを内外にアピール、プロモートする媒体としての役割も担っているが、産業用のIoT活用という視点でドイツ国内や欧州に閉じたものでなく、広く世界に理解と協力を呼び掛けた内容になっている。」「この標準化ロードマップに記載してあることからどれだけ具体的な将来像やユースケースを理解していくかがまず第一歩と思う。」とあります。この解説書の中に次のようなコラムが記載されています。

 コラム4. 「さあ、我が社もIndustrie 4.0を入れよう!」 よくある話

〜中略~

 A氏:なるほど。話は変わるが、Industrie 4.0化していけば、工程やスタッフは自動化、自律化されてしまうと、人は不要になるね。Industrie 4.0は確か無人工場を目指してるんだろう?

 B氏:いえいえ、本標準化ロードマップの2.7節にある通り、Industrie 4.0では、人の学習と能力開発を促進することを目指しています。貴社の組付け工程では、長らく自動化に向けてロボット等導入の検討や実践をされてきていますが、ロボット等にはやはり限界がありますし、ロボット等は少なくとも改善はしてくれません。こうした所に人の大きな役割があると思われています。

 以上 解説書より

 この中の「人の大きな役割」の考え方について関連記事が本ブログにあります。ここに再掲します。

<自動化AI化に必要なこと>

 工場はプロセス系と組立系の2つのタイプに分けることができます。設備集約型と労働集約型と言い換えることもできます。

 プロセス系には、鉄系、非鉄系など、原材料から精製して均一素材を製造する工場や、その資材から単一部品を作る工場があります。さらに、半導体やプリント基板の様に、複数の素材を使い、化学反応、電気的な処理を施してものを作ることもあります。いずれも、専用設備がなければ、ものづくりができない工場です。

 一方、組立系の工場は、数多くの部品を集めて組み付け、検査を通して最終製品を作る工場です。多くの場合、人手作業となるため品質の安定化は作業者のスキルに頼ることになります。特にパソコンやスマホのように多品種変量生産のラインとなると、自動化の難易度が高くなり、長年、人手作業から脱することができないでいる場合が多いと思います。

 以上から考えると、人(アナログ)と機械(デジタル)の特徴は次の通りだと思います。

人 :超汎用性/判断力/自律行動/改善活動(QCD)/技術技能の習得力

   ビンピキング、柔軟物ハンドリング能力/想像力/創造力/芸術性

機械:高速/品質安定化/重量物ハンドリング/高精度/24時間連続稼働

   耐環境性(高温、定温、放射能、真空、高所、クリーン)/単純繰り返し

 今後、組立系も自動化が進み、プロセス系、組立系とも最適な製造条件の設定はIOT、AI技術により実現されていくと思います。ただ、自動化設備、ロボットの動作を教示したり、最適製造条件を解析するためにAIに学習させたりする必要があります。現状、ものづくりのベテランや匠が先生となって教示や学習させています。人による教示、学習指導が続く限り、先生の育成が必要になります。

 ものづくり先生を育成するためには、ものづくりの開発現場、実践する現場が必要となります。その現場はアナログの現場、マニュアルの現場であって、ベテランや匠が持っている創造力を養う場でないといけないと思います。創造力をもって新技術・技能を開発し、ロボット、AIの特徴を生かす方向で教示、学習させるといったサイクルを作らないといけないと思います。技術、技能は何もしなければすぐに陳腐化してしまいます。現在のベテランのスキルノウハウをロボット、AIにすべて叩き込んでも、以降の成長は期待できません。

 ものづくりのベテラン、匠がいなくなるので、いるうちにロボット化、AI化を進めますはおかしな話で、ロボット化、AI化を進めるためには、ベテラン、匠を育てることが必要です。ロボット技術の専門家、AI技術の専門家はものづくりの専門家ではありません。

 ブログ№087自動化AI化に必要なこと より

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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