273自動化は治具から(その2)
以前、ブログ№168で「自動化は治具から」といった記事を書きました。今回はいくつかの実践例について記載してみます。
<ネジ供給治具>
過去に、ハードディスク組立ラインを開発した経験があります。その中の設備の一つにカバーの7軸同時ネジ締め設備がありました。ハードディスクのケースの中に、媒体となる円板、ヘッドユニットなどを搭載し最後の工程に、弁当箱のふたのような四角いカバーを7つのネジで締結します。管理ポイントはケースとカバーの間にあるゴム製のパッキンが、均一に圧縮されることです。
マニュアル作業の場合は、ネジを一本ずつトルクドライバーで締めていきます。締める手順は、対角線上に星を描くように行います。仮締め、本締め、増締めといったように7か所×3回の計21回のネジ締め作業を行っていました。7軸同時ネジ締め機は、カバーのネジ位置に合わせた7本の電動ドライバーをロボットの先端に取り付け、規定のトルクまで一気に締め上げます。
ネジの供給にはネジ振込治具を作りました。板金に7本のドライバーの位置に合わせて、ネジのバカ穴を7個あけます。そのバカ穴のグループのピッチをずらして、同じく穴をあけます。これを数十回繰り返して、穴だらけの板金製の治具ができます。ばらばらのネジをこの治具の上で数回ふるいをかけると、ネジの首下がバカ穴に入り、きれいに整列します。整列したネジを治具のままネジ供給トレイとして設備に投入します。
<マトリックスボード>
まだ携帯電話が普及する前、固定電話の新規加入や入れ換えが発生すると、電話局側で配線ケーブルの接続や切断をマニュアル作業で行っていました。このマニュアルでの配線作業を自動化するシステムを開発したことがあります。本局からのリモート制御でロボットが完全自動で配線します。
ロボットで行う場合、配線ケーブルの代わりにマトリックスボードと接続ピンを使います。縦100mm×横200mm程度のマトリクスボードの分離スル―ホールに対してφ1mm×長さ10mm程度の接続ピンをロボットが挿入抜去することで配線します。狭い局舎内にマトリックスボードを沢山敷き詰めるため、マトリックスボードを数百枚取り付けるフレームは縦置きで2列になっています。XYZθロボットがその縦置き2列のフレームに挟まれる格好に設置され、θ軸(反転機構)を使って両フレームのマトリックスボードにアクセスします。このXYZθロボットには接続ピンを把持する4つ爪とマトリックスボードの位置を検出するレーザーセンサーが搭載されています。ロボットの作業エリアは長さ(X)4m、高さ(Y)2m、幅(Z)0.5mほどになります。接続ピンとスル―ホールの位置合わせ精度は±0.1㎜程度だったと思います。
<ツールとATC>
多機能組立システムは、多品種少量生産やライン変動に柔軟に対応することを目的に開発したものです。ロボットを中心にしたシステムで、対象とする組立作業は、SMTラインの後工程です。プリント基板に実装されたパーツへの絶縁シールの貼り付け作業、パーツに接着剤を塗布する作業や、導通チェック作業などを行います。
パーツの供給はロール供給とパレット供給が可能です。ワークの供給には2種類の組立パレットが備え付けられ、それをターンテーブルで入れ換えします。ハンドはシール吸着ハンド、保護キャップグリッパー、接着剤塗布用ディスペンサ、導通チェック用プロ―バなどがあり、自動ツール交換機能(ATC)も装備しています。ただし、ワークのロード、アンロードは作業者が行います。
<自動化と治具とツールと型>
ロボットと言うと人間の様にどんなものでも作れてしまうと思われていますが、実はただの搬送位置決め装置です。部品を挿入したり、ネジ締めを行ったり、シールを貼ったり、接着剤を塗布できるのは、ロボットアームの先端に取り付いているツールです。機械も同様です。自動車の板金フレームやパソコンの樹脂フレームなども、プレス機や樹脂成型機の型によってものが作られます。
治具もツールも型の対象となる製品を作るための専用となります。したがって自動化を進めるに当り、治具、ツール、型の設計ができないと、自動化、機械化はできないということになります。治具、ツール、型の設計ができて初めて一人前の自動化設計者と言えると思います。
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