260超音波接合と機械学習
「温度制御と加圧でCFRPとAl合金を接合、ボルトや接着剤を使わず軽量化に期待」という記事が日経XTECHの2020年11月に掲載されています。
日本アビオニクスは、締結部品や接着剤を使わずに炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(熱可塑性CFRP)とアルミニウム(Al)合金を接合する異種材料接合技術を開発した。同社の接合装置「パルスヒートユニット」を使用し、およそ5×20mmの範囲を接合した場合に、30MPaの引っ張りせん断強度を得られた。
新技術では、接合物に圧力をかけて押さえつける溶接用ヘッドにパルスヒートユニットから電気を流し、抵抗発熱で加熱して対象物を接合する。ヘッドに搭載した熱電対からの温度データをフィードバックし、精密に温度制御して加熱過多によるプラスチックの劣化を抑えながら異種材を接合できる。接合面には、薬品を使用しないドライプロセスであらかじめ表面処理を施す。接合エリアを選択的に処理でき、接合範囲外への影響を抑えられる。
~中略~新技術で異種材を接合すれば、製品の小型化・軽量化が可能で、部品点数と工数を減らせる。接着剤を使わないため環境負荷を低減できる、接着剤の管理にかかる手間を省けるといった利点もある。同社は今後、接合強度と耐久性の向上を図るとともに、汎用性の高いプラスチックや他の金属材料にも応用するなど、適用範囲を拡大していく。
以上、日経XTECH 2020年11月より
上記の中で注目するのは、「パルスヒートユニット」、「温度データをフィードバック」といった点です。パルスヒートユニットからの膨大なデータとそのフィードバックデータが存在する点です。記載はありませんが膨大なデータによる機械学習ができる条件がそろっていると思います。既に機械学習を活用しているか、少なくとも今後さらに性能を安定化させるための準備はできていると思います。
以前所属していた職場において、フリップチップと基板を超音波で接合する要素技術を開発していました。従来、フリップチップはアンダーフィルと呼ばれる接着剤を使って接合していましたが、接着中に発生する気泡や、接着後に湿度による膨張などの影響を受け強度、導通性能といった品質の安定性に課題がありました。超音波接合では基本的に接着剤の性能に左右されることがないといった点が、開発の狙いだったと思います。
しかし、いざ超音波接合に取り組み始めると、温度、振動数、振幅のほか、直線振動、円弧振動、楕円振動など接合強度を左右するパラメータがたくさん存在することが判りました。さらにその振動を作り出すホーンの形状については、その都度シミュレーションを行いながら設計する必要があり、結局、当時は量産の実用化には至りませんでした。
IoTによる膨大な実験データ(説明変数と目的変数)と、機械学習を通してパラメータの最適解や結果予測を算出することができると思います。またアディティブ製造を使うことで、複雑な形状なホーンの製作も可能となると思います。
過去には目標に達することができなかった技術開発も、現在の先端技術を活用することで可能となることはあると思います。過去の技術開発を棚卸して、再度挑戦する価値はあると思います。
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