261 IoT AIを活用した品質改善(解説3)2版
㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は3回目です。
<抜粋:データを活用した品質改善>
今回のモデルでは(プロセス系工場をモデルとした例では)、データを使って品質異常が発生する予兆を検知しこれに基づいて改善対策を実施する仕組みの開発に取り組んだ。データを活用した従来の品質改善の流れと異常予兆検知による品質改善の流れを示す (図略)。従来の手法では、現場から収集したデータをリアルタイムに見える化し、品質の異常発生を検出して改善対策を実施する。異常予兆検知を取り入れた手法では、品質に大きく影響する要因のデータをリッチ化しAIによるデータ分析を行うことで異常予兆を検知し、改善対策を実施する。つまり、前者では不良発生後の改善になるのに対して、後者では事前に改善を講じられ不良を未然に防止することができるのである。
製造品質に関するデータ同士の相関を明らかにし品質管理に必要なパラメータを適正にコントロールすることができれば、品質改善、歩留まり向上につなげることができる。そこでまず、現場の現状分析を行うべく同時に2つの取り組みを始めた。一つは、今どのようなデータが保有されているか洗い出して整理すること(データ棚卸)、もう一つは、ベテラン技術者を交えて考えられる品質不良の要因を徹底的に洗い出しその要因を相関図に表すこと(要因分析)、である。両者の結果を突き合わせてみると、出来上がった要因の相関図から必要と思われる要因(データ)が現状では十分に収集されていないことが分かった。また、設備から吐き出されるデータは十分活用されていない、といった実態も見えてきた。
<解説>
以前所属していた生産技術部門では、加工条件や加工結果に関する膨大なデータを活用して製造品質を改善するといった取り組みに着手していました。そのモデル事例として、プロセス系工場であるプリント基板製造ラインで実施している品質改善について紹介されています
異常予兆検知のAIシステムを導入するために、現地調査からフィージビリティースタディーを1年かけました。異常予兆を検出するためには、まず十分な製造データ、プロセスの条件データと、その結果出来上がった製品の品質レベルがどの程度になるかの結果のデータが必要になります。過去に遡ってそれぞれのデータが、時系列または製造ロットと紐ついていることが必要となります。その紐ついたデータをAIシステムで学習することで、予測モデルを作り、その予測モデルに直近の製造データをインプットすることで、実際の結果が出る前に、品質のレベルを予測します。(異常の予兆を検出します)。
特にプロセス系の工場の場合、製造リードタイムが数週間になることも、まれではありません。条件設定やチューニングを行っても、それが良かったのか否かをすぐに知ることができないので、AIの導入は有効であると考えられています。AIシステムは専門メーカー各社から提供されているので、購入は容易です。しかし、AIシステムを導入する前に、やっておかないといけないことが山ほどあります。その一つが、データの棚卸とベテラン技術者による要因分析です。
<ブログ№106の追記>
AIシステムを導入する前に、質の良いデータが十分な量で時系列に収集できれば、製造の良否判断と不具合点を探ることができます。たとえば、ある工程の管理パラメータ一つをとっても、1日の平均、工程能力を算出できます。1週間、1か月の時系列で眺めれば傾向が分かります。周期性、偏り、右上がり右下がりの傾向、ばらつきなど4Mの何かが関係しているはずです。日頃、基準値内に管理値が入っていたらOKにするのではなく、AIシステムがなくともデータから多くのことを読み取ることは大切です。
システム構築には多くの費用と時間が必要となります。システム構築を進める中においても随時効果を出していくことが必要とされます。
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