247設備の復旧作業
自動化を進めるにあたって、汎用ロボットを組み込んだ設備の開発が多くなってきています。最近の汎用ロボットは単にパーツの搬送、位置決めをするアクチュエータとしての機能だけではありません。視覚、力覚などのセンシングの機能もあり、そこから収集されるデータを使って品質の予測、設備故障の予測などいわゆるIoT/AIへの展開を可能とします。
上記の通りに書くと、すぐにでもロボットを導入してみたいと思いますが、一方で大変となる面についても十分認識しておく必要があります。この大変さを克服して初めて自動化が進みます。置いておくだけで物が売れる自動販売機とは違います。以下にロボットを使った設備の大変さについて記述します。過去の経験に基づいていますので、現在ではかなり改善されていると思いますが、ロボット専用の技術者が必要となる理由がわかると思います。
ロボット運用の大変さの代表格は復旧作業です。かつてのロボットはインクリメンタルエンコーダを使用していため、電源が切れると自分の位置がわからなくなってしまいました。作業の途中に停電などで停止すると復旧に手間取りました。
まず、ロボットが把持しているバーツを取り除き、ロボットのホームボジション近くまでティーチングペンダントを使って移動させます。移動時に注意しないと周りの環境と干渉したり、ロボットアーム自身に干渉し、機構的にズレが発生したりします。機構的にズレが発生するとキャリブレーションが必要となり,さらに復旧に時間がかかります。
最近のロボットはアブソリュートエンコーダを使っているため、電源が切れても自分の位置を認識できるので、ホームボジションへの移動は必要ありません。しかし安全な場所までに退避させる際は、同じく注意が必要です。特に最近では、他の設備やロボットとの協調作業が増えています。停止状態が今まで以上に複雑となります。
ロボットが1台2台であれば対応ができます。しかしライン化された数十台のロボットが停電で一斉に停止することを考えると、復旧の大変さがよくわかると思います。ロボット技術者が何人いても足りないと思います。
ロボットが停止する場合は停電だけではありません。非常停止ボタンを押した場合、プログラムミスによる衝突、過負荷などロボットのエラーが発生した場合など様々あります。したがって、ロボットを組み込んだ設備やシステムを開発する際には、1つの組立てシーケンスをプログラム、ティーチングするよりも、何かあったときに、いかに安全に簡単に復旧できるかがカギとなります。ちなみに、ロボットの停止には瞬時停止、1ステップ停止、1サイクル停止などがあります。安全性を考慮して停止の使い分けを行うなどの工夫が必要です。
プリンターがジャミングすると、復旧するまでに時間がかかるだけでなく、用紙も損失します。ロボット設備も同じです。製造ラインを止めるだけでなく、高額な部品を壊してしまう可能性もあります。安全、簡単に復旧できるシステムを構築して、ロボットの大変さを克服して、初めて自動化、IoT/AI化へと進めることができると思います。
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