246アディティブ製造とIoT
日産自動車がアディティブ製造(Additive Manufacturing、3Dプリンティング)への取り組みを本格化させている。現時点では量販車の部品へのアディティブ製造適用はまだだが、研究部門と開発部門を中心に、近い将来の実用化を視野に入れた検討を積極的に進めている。その背景にあるのが、自動車の電動化だという。~中略~
純粋なEVならエンジン車より部品点数が減る可能性が高いが、それ以外の電動車(HEV)はかえって部品点数が増えることになる。これが、「電動化で部品点数が増える」と日産が考える理由だ。自動車としてのスペースは限られているので、各部品に対する小型化の要求は当然厳しくなる。CO2排出量の削減を目指した環境規制に対応する観点でも部品の小型化・軽量化は不可欠になる。
最大の目的は軽量化だ。特にエンジンを構成する「動く部品」を軽量化できると波及効果が大きいからだ。例えば、ピストンであれば100倍、コンロッドでは35倍の効果があるという。つまり、ピストンを100g軽量化できれば、車体を10kg軽量化したのと同等の効果を得られる。~中略~
例えば、同社がアディティブ製造で試作した軸部品では、内部に微細な空洞があるラティス構造を採用し、強度を維持しながら6割以上の軽量化を実現。さらに表面積は12.4倍になったために冷却効果も高められた。これ以外にも、14部品をアディティブ製造で一体化し、製造工程を182工程から5工程に削減してコストを半減するといったケースもあったという。
日経XTECH 2020.11.06 より
部品点数を減らして、軽量化を図る取り組みはものづくりの普遍の課題の一つです。たとえば、試作段階では複数の部品を組み合わせて、実験評価用のプロト製品を作ります。量産段階では、金属モールド、樹脂一体モールド、板金による一体成型などにより、部品点数の削減による組立作業のコストダウンと製品の軽量化が実現できます。たとえば、配線作業はプリント板化することで、信頼性の向上と配線作業のコストダウンができます。電子部品をはんだ付け作業は半導体のようなチップ化により実装作業のコストダウンと軽量化が実現できます。
しかし前述の方式の共通的な問題点は、型や版といったものが必要となり、どうしても量産化が前提のものづくりです。需要の多様性に柔軟に対応する多品種少量生産には向いていませんでした。一方、マニュアルの組立作業、配線作業、実装作業は柔軟性に富んでいます。そして、部品の軽量一体化と、需要の多様性に対応する柔軟性の両者を満足させる方式が型、版を必要としないアディティブ製造です。今後さらに研究が進む分野です。
さらにアディティブ製造の特徴はマニュアルの組立、配線、実装作業の様に多くの管理項目がなく、モールドと同様に温度、圧力、材料の密度(濃度)といったパラメータを管理するだけです。ここで収集されるデータは品質面、サンプル数においてもIoT/AIとの相性が非常に良いものと考えられます。
日産の取り組みは、単に部品の小型軽量化にとどまることなく、IoT/AIとの組み合わせにより需要の多様性に対応しながら、品質や生産性の向上へと展開されていくと思います。
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