245ばら積みピッキング
トヨタ自動車が、ばら積みピッキングロボットの活用を進めている。これまで課題だった投資対効果にめどが付いた。~中略~
ばら積みピッキングロボットは、箱の中に乱雑に積まれたワーク(運搬対象)を把持・運搬するロボット。トヨタ自動車は、川崎重工業のばら積みピッキングロボットを採用した。~中略~ トヨタ自動車はなぜ川崎重工業のばら積みピッキングロボットを選んだのか。~中略~その利点として、キャリブレーションの手軽さを挙げる。キャリブレーションとは、目の座標系(画像座標系)と頭脳の座標系(ロボット座標系)を整合させる調整作業である。ばら積みピッキングでは、ワークや周辺環境などを変更するたびにキャリブレーションが必要になる。その時間が短ければ短いほど、生産品目の切り替えに素早く対応できるので、トヨタ自動車はその点を評価したようだ。~中略~
あえて工程を独立
トヨタ自動車は当初、箱から部品を取り出して台上に整列させる工程と、整列させた部品をシャシーに運ぶ工程をつなげる構想だったようだ。しかし、それだとロボットの待ち時間が発生したり、部品の種類に応じてロボットが追加で必要になったりすることから、投資対効果が低かった。そこで、整列させる工程を独立させ、24時間体制で稼働させる案を検討したところ、投資対効果を十分に得られるめどが付いたという。この場合、1台のロボットで複数種類の部品に対応しやすくなり、全体で必要なロボットの台数を抑えられる。
日経XTECH 2020.11.06 より
組立の自動化において、部品の安定供給は常に重要な課題となります。中でもバラ積みピッキング(ビンピキング)は、高度な技術が必要となります。さらに現場に適用するとなると、ロボットの取り扱いの手軽さと、”あえて工程を独立”といった点にあるのだとおもいます。インラインに適用すると、ピッキングミスによる遅延、機種変更によるキャリブレーション時間のロスなどが発生し、ライン生産に大きく影響するからです。工程を独立することで、この問題が解消できたのだと思います。
かつて、以下の様にネジの供給で同じような経験をしたことがあります。
ハードディスクドライブの組立ラインを開発した時のことです。その中の設備の一つにカバーの7軸同時ネジ締め設備がありました。ハードディスクのケースの中に、媒体となる円板、ヘッドユニットなどを搭載し最後の工程に、弁当箱のふたのような四角いカバーを7つのネジで締結します。管理ポイントはケースとカバーの間にあるゴム製のパッキンが、均一に圧縮されることです。
マニュアル作業の場合は、ネジを一本ずつトルクドライバーで締めていきます。締める手順は、対角線上に星を描くように行います。仮締め、本締め、増締めといったように7か所×3回の計21回のネジ締め作業を行っていました。7軸同時ネジ締め機は、カバーのネジ位置に合わせた7本の電動ドライバーをロボットの先端に取り付け、規定のトルクまで一気に締め上げます。
ネジの供給にはネジ振込治具を作りました。板金に7本のドライバーの位置に合わせて、ネジのバカ穴を7個あけます。そのバカ穴のグループのピッチをずらして、同じく穴をあけます。これを数十回繰り返して、穴だらけの板金製の治具ができます。ばらばらのネジをこの治具の上で数回ふるいをかけると、ネジの首下がバカ穴に入り、きれいに整列します。整列したネジを治具のままネジ供給トレイとして設備に投入します。
後に、自動ネジ振込機を開発し、オフラインで各種のネジをトレイに整列しました。
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