237自動化推進と多機能組立システム
パソコン、携帯電話などの組立分野は、現在もマニュアル中心の製造体制であり、自動化による生産性の向上は、現在も大きなテーマとなっています。このような製品の自動組立を進めるには汎用組立ロボットを活用した設備がかぎを握り、次の条件が必要です。
・ツール・治具・パーツ供給機が容易に交換できること
・工程組み換えを容易にするため、小型軽量で操作性が良い設備であること
・多世代、他製品にも対応できるベースマシンとなること
・高速化、安定化、省スペース化が図れること
そして、実現・展開するために継続的にすべきことは、
・組付・貼付・ハンダなど作業対象となる要素技術開発
・パーツ供給、ワーク搬送などのハンドリング技術開発
・視覚・力覚フィードバックによる自律化技術の開発
・トータル生産性の向上を図る製品開発源流への取り組み
・マニュアル作業とバランスがとれたライン構築・改善への取り組み
などがあります。特にこの分野では、製品開発から、製造プロセス、物の流し方、設備化まで、一貫したものづくりのコンセプトに基づいた自動化展開が要求されます。
自動化推進協会発行「自動化推進 2010VOL.39 No.1(冬号)」巻頭言より抜粋
上記コンセプトの下に開発した多機能組立システムについて下記に記載します。
このシステムは、多品種少量生産やライン変動に柔軟に対応することを目的に開発したものです。ロボットを中心にしたシステムで、対象とする組立作業は、SMTラインの後工程です。プリント基板に実装されたパーツへの絶縁シールの貼り付け作業、パーツに接着剤を塗布する作業や、導通チェック作業などを行います。
パーツの供給はロール供給とパレット供給が可能です。パーツ供給はライン作業者と干渉しないように、システムの後面に配置しました。また、段取り替えに伴う頻繁なパーツ交換に対応するため、供給機をユニット化し、プラグイン機能を施しました。これによりパーツの交換に伴う工数を大幅に削減することができました。
ワークの供給には2種類の組立パレットが備え付けられ、それをターンテーブルで入れ換えします。ハンドはシール吸着ハンド、保護キャップグリッパー、接着剤塗布用ディスペンサ、導通チェック用プロ―バなどがあり、自動ツール交換機能(ATC)も装備しています。ただし、ワークのロード、アンロードは作業者が行います。
多機能組立システムのライン導入に向け、その効果を最大限引き出すため、多くの取り組みがあります。ここではDFM(Design for Manufacturing)をはじめとした自動化・ロボット化推進の方向性と取り組みについて述べます。
〈設計改善(DFM)〉
実際に行った設計改善について紹介します。対象はユビキタス製品のプリント板ユニットで、パーツは貼り物(絶縁シール)です。製品設計側では、絶縁したい端子の形状または周辺のエリア形状に合わせ、シールを設計していたため、機種ごとにシールの種類が増えてきました。これに伴い、製造側ではシール供給装置が複数台必要となり、多機能組立システム内の設置スペースの問題や、パーツ供給の工数増加が懸念されました。シールの完全共通化は設計側にとって大きな負担となるため、シール幅のみを標準化しました。長さ方向はパーツ供給機内で必要寸法にカットする方法を選択し、同時に設計ガイドラインとして規格化を進めました。これにより部材費、供給工数の削減を実現しました。
〈シミュレータ〉
VPS(Virtual Product Simulator)といったツールでDMU(Digital Mock-Up)を作成し事前に製品の組立性、作業手順を決定します。ロボットメーカから提供されているロボットシミュレータに周辺設備、ワーク、パーツのDMUを取り入れ干渉をチェックしながら最適動作パスをシミュレートするなど、バーチャル環境でプログラミングを実用化しました。現在はさらにラインシミュレータGP4といったツールでマニュアル作業をバーチャルに置き換え、人と機械が協調するトータルシミュレーション環境を整備しています。製品設計と製造ライン設計を同期することで大幅な生産準備期間を削減しリアル環境での垂直立上が可能となりました。
〈オートティーチング〉
ワーク、パーツの中にはカメラによる認識ができないものがあります。その場合、マニュアルのティーチングデータに頼った位置合わせが必要になります。ティーチング作業は理想値を求めて何度となく試行するため、膨大にかかる工数の短縮が課題となっています。プリント板ユニットの導通チェックアプリケーションはその一例です。ロボット自身がチェックパッドの中心をプローブピンでスキャンし、最適なティーチングデータを生成するしくみを開発、実用化しました。教示の自動化によって生産準備期間の工数を削減しました。
「自動組立は組立の自動化ではない。組立を自動化するために何かをすることである」は、自動組立の世界的権威者の牧野先生(現自動化推進協会名誉会長)の言葉です。
参考資料
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja
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