236クリーン環境の作業と機械
精密部品、精密製品の製造にはクリーンルームの環境が必要になります。この環境下に対応するためには自動化、IoT/AI化が重要な役割を果たします。機械、設備そのものがクリーンルーム仕様であることは当然ですが、取り扱い方も含め通常環境との違いを十分把握しておく必要があります。過去にクリーン環境での製造に取り組んできた事例を記載します
<クリーンルームでのマニュアル作業>
ハードディスクドライブ(HDD)の自動組立ラインの開発と導入をプロマネ時代に経験しました。1997年から3年間で約20ラインをフィリピン、タイの製造工場へ導入しました。当時のハードディスクは5インチ、3.5インチが主流であり、その組立はディスクエンクロージャーといったワークに、媒体の取り付け、ねじ締め、バランス調整、ヘッドの取り付け、カバーの取り付け、ねじ締めなどの作業を行っていました。フィリピン、タイでは人海戦術で対応していました。
媒体の記憶密度の上昇に伴い、組立作業のクリーン度の環境も年々厳しくなってきました。作業者がクリーンルームに入る前には、化粧を落とし、下着を取り替え、頭にネット、口にはマスク、手袋を二重にしたうえで、全身を覆うクリーンスーツを着ていました。このような装備で組立作業を行っても、ゴミ、コンタミの発生を完全に抑えることは難しく、ハードディスクの歩留まりは限界に来ていました。
<クリーン対応自動化設備の開発>
クリーン対応にするため、ボールねじ、タイミングベルト、ギア列などの機構部すべてにカバーをしました。が、どうしても機構部の潤滑材の飛散を抑えることができなかったため、1軸直動ロボット内の空気をブロア(掃除機のようなもの)で吸い出すことで対応しました。1軸直動ロボットの場合、シリンダ構造なのでポンピング作用によって、内部空気が外へ出てしまいます。空気がうまく循環するようにバイパス構造にする手もありましたが、確実なのはやはりロボット内部を負圧にすることでした。なお、吸出しに必要な指標は真空圧ではなく流量であることも重要でした。
<クリーンルーム内に設備を搬入する場合>
クリーンルーム仕様の設備を、製造現場の稼働中のクリーンルームに搬入し、試運転して現地の製造技術部門へ引き渡したことがあます。設備メーカーで自動組立機能の評価とクリーン度のチェックを行いOKとなると梱包をして、搬送します。この梱包、搬送は通常の環境で行いますので、ゴミ、コンタミが設備に付着します。現地のクリーンルームに、この状態で設備を搬入すると、クリーンルーム全体が汚染されてしますので、養生します。
クリーンルーム内にはクリーンブースといったテントを用意します。設備はクリーンルームの前室でゴミ、コンタミをよく拭き取ります。その後、クリーンブース内に搬入し、電源を投入してランニング運転を1日ほどします。動作することでゴミが飛散しますが、クリーンブース内には清浄な空気を取り込み、汚染された空気を排出する仕組みがあります。もちろん、設備もブロアーで設備内部を吸引しているのでゴミの発生はありません。
ランニング運転が終了して、クリーン度に問題がなければ、クリーンブースが取り除かれます。クリーンルーム内に設備が設置された状態となり、設備が通常稼働されます。以上、この一連の作業を養生といいます。
<クリーンルーム内の管理>
設備のクリーン度、ブースのクリーン度が保たれているかを確認するため、定期的に作業者がパーティクルカウンタで測定する必要があります。また、設備には配線配管が作業面より上にある場合があり、これも定期的に掃除する必要があります。また、常に配線配管のルートを工夫してゴミが落ちない、落ちても影響を最小減にするための取り組みをしていました。
<クリールームの仕組みに合わせた作業と設備化を>
・クリーンルームはクルーンエアーをダウンフローすることで塵埃を排出します。
・ダウンフローを妨げると塵埃が、物に付着したり、塵埃を拡散したりします。
・特にワーク上は作業者も設備もダウンフローを考えた作業や仕組みが必要です。
0コメント