213協調領域と競争領域
ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)をご存じでしょうか。
RRIは、「ロボット新戦略」(2015年2月10日に日本経時再生本部決定)に基づき、同戦略に掲げられた「ロボット革命」を推進するため、民間主導で設立された組織的プラットフォームです。「ロボット新戦略」においては、デジタル化及びネットワーク化を活かしつつ高度のセンサーや人工知能を駆使して作業を行うシステム全般を新たな「ロボット」の概念として広く位置づけ、以下を目指すこととされています。ロボット革命イニシアティブ協議会は、これらの目標の実現に向け、広く関係者が連携し、具体的なアクションを起こしていくための、オープンなイノベーションプラットフォームとして、活動していきます。
①世界のロボット・イノベーション拠点としての日本―ロボット創出力の抜本的強化
②世界一のロボット利活用社会
③IoT時代の到来を見据えたロボット新時代への世界の中でのイニシアティブの発揮
https://www.jmfrri.gr.jp/outline/overview.html より
RRIの活動の一つとしてスマートマニュファクチュアリング国際標準化といった取り組みがあります。2020年6月の報告書に協調領域と競争領域の下記記述があります。
日本の仕事のやり方は、自前主義で一からやるため、戦う領域がたくさんある。一方、ドイツの仕事のやり方は、競争領域より協調領域をたくさん持っている。~中略~
F1 という極限状態で走るモータースポーツでは CPS を使っている。筒内の圧力をリアルタイムで見てこのエンジンのトラブル解析などに活用する。協調領域は、“何を:WHAT”の部分であり、筒内の圧力を正確に測るということにあたる。一方、競争領域は、“どうやって:How”の部分であり、ドイツの OEM、又はサプライヤーは CPS をどうやって作るかということにあたる。~中略~
次は、自動運転を例にする。目の前に出てきた車をどのようにセンシングしてジャッジメントして自分の車を止めるかは、OEM、サプライヤーの競争領域である。このようなシステムに対して、何を評価、検証すればよいかは、協調領域である。ドイツでは、ドイツ経済エネルギー省(BMWi)が主導し、自動運転の期待性能水準と評価基準を明確化するための産官学が共同で実施するプロジェクトを立ち上げている。
https://www.jmfrri.gr.jp/content/files/Open/2020/20200206_INTLSTDForum/Report_r5.pdf より
長年、生産技術に携わってきたものから見れば、上記ドイツのたとえは非常に理に適っていると思います。検査試験以外の製造工程は、いかに付加価値を生むか、いかに他社との差別化を図るかが大切になる競争領域であることは間違いありません。
一方、検査試験は付加価値を生む工程ではなく、他社と差別化を図る工程ではありません。どんなに高機能、高性能になっても歩留の改善、生産性の改善に直接つながるものではありません。しかし市場に不良品を流出させることは決してあってはいけません。製品の多機能化高性能化に伴い、検査試験設備はさらに高次の機能性能が必要となります。ここに産学官での技術協調の大切さや、標準化の必要性があるのだと思います。
協調領域、競争領域の峻別を明らかにして、これからのものづくり業界を牽引してくれることをRRIに期待します。
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