212サイバーフィジカルとデジタルツイン

<サイバーフィジカル>

 「サイバーフィジカルシステム」(CPS:Cyber-Physical System)とは、現実世界(フィジカル空間)でのセンサーネットワークが生みだす膨大な観測データなどの情報について、サイバー空間の強力なコンピューティング能力と結びつけ数値化し定量的に分析することで、これまで「経験と勘」に頼っていた事象を効率化し、より高度な社会を実現するために、「あらゆる社会システムの効率化」「新産業の創出」「知的生産性の向上」などを目指すサービスおよびシステム。

 これまで実現できなかった「部分最適」から「全体最適」へ向かうアプローチであり、データの収集/蓄積/解析により得られた解析結果を実世界へフィードバックする一連のサイクルについて社会規模での実現を目指す。

 https://analytics-news.jp/info/cps より

<デジタルツイン>

 デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実の世界から収集した様々なデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術のことです。コンピュータ上では、収集した膨大なデータを元に、限りなく現実に近い物理的なシミュレーションが可能となり、自社製品の製造工程やサービスの在り方をより改善するうえで有効な手段となります。例えば製造ラインの一部を変更する場合など、事前にデジタルツイン上でテスト運営することで、開発期間やコストの削減が見込めます。

 また、IoTを活用してリアルタイムの情報も取り込んでいくことで、商品の故障予知に役立てることもできます。例えば同じ製造工程を経て出荷された2つの製品があった場合、出荷後の稼働状況をIoT技術により集約・分析すると、使われ方の違いを把握することができます。これらのデータを蓄積すれば、故障する可能性を事前に察知し、故障する前に使用を停止させるようアラートを上げることも可能になります。

 ICT Business Online NTT Communications より

 ものづくりの現場において、サイバーフィジカルの考えの下に、デジタルツインといったデータを活用した製造のQCD改善が始まっています。ものづくりには製品開発、生産準備や部品の調達、製造そして出荷といった大きな流れがあります。製造以外で収集されるデータの多くは、人が作ったデータです。設計値、部品数、供給数、出荷数などです。それはデジタルデータです。サイバーとフィジカルが一致すると思います。

 一方、製造に関係しては部品寸法、温度、圧力、電流、振動、照度などの物理データです。それは、さまざまな環境の影響で誤差を含んだアナログデータとなることを理解しておく必要があります。サイバーとフィジカルが一致しません。製造現場では、誤差または誤差に伴う4Mのバラツキを如何に小さくするかといった取り組みを行わないと、デジタルツインを使うことができないと思います。

 以前ティーチングプレイバックロボットを開発していた時、並行してロボットシミュレーターも開発していました。シミュレーターの開発担当が「シミュレーターのロボットはちゃんと組立作業ができるのに、そのシミュレーターのデータを使って実際のロボットを動かすと組立作業ができないのは、実際のロボットが良くないからだ。」と言っていたことがあります。もちろんこれは間違いです。シミュレーションをする際に、すべての物理現象を考慮していないからいけないのです。

 製造にかかわる物理現象を全てサイバー化するまでには、まだまだ時間がかかると思います。当面、従来通りの4Mのバラツキを小さくする取り組みは必要だと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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