210無電解メッキ

 早稲田大学はアディティブ製造技術とめっき技術を組み合わせ、融点の異なる金属とプラスチックが一体になった立体造形物の作製を実現した。

 ~中略~ 具体的にはまず、プラスチック用の3Dプリンターで材料として使われるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂に塩化パラジウム(PdCl2)を含有させたABS+PdCl2フィラメントを開発。このフィラメントとABSフィラメントを材料にして、デュアルノズルを搭載するアディティブ製造装置で出力し、ABS+PdCl2部分とABS部分で構成される立体を造形する。その造形物に対して無電解めっきを施すと、PdCl2部分に金属が析出し、金属部分とプラスチック部分が混在した立体造形物が得られる。

 この手法は、無電解めっきによって位置選択的かつ密着性の高いめっき層を設けられる。図1(図略)のように、ニッケル(Ni)をベースとしためっきを施し、この部分に金めっきを重ねるといった加工も可能だ。

 析出した金属膜のプラスチック表面への密着性が予想を上回ったことから、研究グループは今後、このメカニズムの解明に取り組むという。IoT(Internet of Things)デバイスやロボット部品などへの適用を目指す。

 日経XTECH ニュース 2020/09/30 より 

 樹脂材料に無電解メッキを施して機能部品を製作することは、過去より多くの製造現場で行われてきています。ここではプリント基板製造における無電解メッキの課題について記載したいと思います。

 ご存じの通りプリント基板とは、配線用の銅パターンと絶縁用の樹脂を交互に積層した構造になっています。各層の銅パターンをつなげるのがスル―ホールです。プリント基板にドリルで穴をあけ、穴の内面にメッキすることで層間の銅パターンがつながります。これがスル―ホールです。層の樹脂部分をメッキするため、最初に無電解メッキを施します。無電解メッキの厚さは数μⅿ程度と非常に薄く、通電には不十分です。そこで、無電解メッキで析出された金属の上に電解メッキを施します。

 この無電解メッキが均一に施されないと、電解メッキも均一にできなくなります。無電解を安定させるために多くの課題があります。

 <前処理>メッキするスル―ホール内面をメッキが析出しやすいように活性化(クリーニング)します。ドリル加工であけられてスル―ホールは内面があれて、ゴミ、コンタミが付着しています。さらにスル―ホールの径は髪の毛の径と同じ程度です。バリ取り、洗浄、リンスなどの活性化処理の条件が鍵になります。

 <液槽処理>プリント基板は化成処理をするため、液槽に浸けられます。液がすべてのスル―ホールにムラなく行きわたるように、液を機械的に攪拌したり、エアバルブで攪拌したりします。スル―ホールに気泡があるとメッキはされません。

 <温度管理>メッキ厚さを一定に保つためには、析出速度を安定化させる必要があります。メッキの有識者からは、処理温度が1℃上がると析出速度は5倍にも6倍にもなると聞いていいます。

 これら以外にも濃度であったり浸漬時間であったり多くの製造条件があります。

 ほとんどの工場では、これらの条件設定やバラツキ抑制を、現場のベテラン作業者の経験とノウハウに依存しています。ここにも、IoT/AIの活躍の場があります。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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