209たまり作業と一個流し生産
工程計画および工程設計段階で、製品特性やロット、生産数などを考慮し最小製造原価を目指して、一個流しの導入を検討することは意義があります。製品別レイアウト(フローショップ)の場合は、各工程の時間を揃えることが比較的に容易なため一個流しを採用しやすく、改善効果も得やすいと言われています。
各工程の管理監督者は”たまり(まとめ)作業”を好みます。その理由は、連続して同じものを作業することに効率性を感じているためです。しかし、本当の結果は逆です。
たまり作業の主なデメリットは、①10個のたまり作業とすると、各工程間のバランスが適切かどうかをひと目で見ることができません。また、②10個単位で移動させるための付帯作業がムダになります。さらに、③各工程作業者は前後工程のたまり具合を気にするようになり、これによって作業速度の最大化が阻害されてしまいます。~中略~このように、たまり作業は決して少なくない欠点を抱えたやり方なのです。
「トコトンやさしい生産技術の本」板倉貢司著 日刊工業新聞社発行 より
パーテーションのパネルの製造現場の例をあげて考えみます。パネルは防音用のウレタンを2枚の板金部品で挟み込んだ構造をしています。製造手順は①畳大の板金を大型プレスで弁当形に成型します。②弁当形の板金の内側に、人手により配線ガイドなどを組み付けます。③弁当箱に蓋をするように、2枚の板金を合わせます。④専用設備を使って作業者が弁当箱の中に発泡性ウレタン材を充填します。
問題はウレタンを充填する専用設備にあります。専用設備はパネル10セットを一括してウレタンの充填を行います。10セット揃わないと設備が稼働できない運用になっています。前工程である、人手によって10セットを組み付けする時間は、ウレタン充填工程の数倍かかります。したがって、充填工程以降は常に待ちが発生してしまいます。
ウレタンの充填設備を導入する際には、10セットまとめて作業すると効率がいいと考えてのことだと思いますが、製造工程をトータルで考えると逆効果になってしまいます。改善案の1つとして、たとえば、次のような運用が考えられます。
①「パネル1枚でもウレタンを充填できるように設備を改造する」→本来設備が持っている10セット一括充填の機能を外す方向にあるので、大がかりな改造にはならないと思います。
②「人手による組み付け作業を、充填設備上で行う」→10セット組み付けしていた場所から充填設備への大がかりな運搬作業を削減することにもなります。さらに、従来の組み付け作業者が設備の操作を兼ねることで、省人化にもつながると思います。
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