205実装組立の段取りとIoT・AI
ものづくりにおいて、実装組立といった実作業以上に段取り作業が重要となるのはご存じだと思います。ここでは、実際にどのような段取りが発生しているかについて、ライン開発していた当時の記憶に基づいて記述します。
<SMTラインの場合>プリント基板に電子部品を実装するSMTラインには、はんだ印刷工程、チップ部品の搭載工程、リフロー工程、外観検査工程、などがあります。以前、各設備から出力されるビッグデータを使ってラインのチョコ停改善に取り組んだ経験があります。改めて見直すと、人手作業もかなりあることが分かります。
はんだ印刷工程:プリント基板上に、はんだ印刷用の版型を使って、チップ実装部分にクリームはんだを自動印刷します。機種が変わる毎に、人手によって版を入れ換える作業が伴います。また、膨大にある版型のメンテナンスと管理はオフラインで行われます。
チップ部品の搭載工程:チップ部品を搭載するチップマウンターは、直交ロボットとチップを吸着把持する数種類のコレット、チップ供給用のリールカセットで構成されています。製品仕様に合わせ全自動でチップ搭載を行いますが、チップ供給は人手で行います。事前にオフラインで準備しておいた、チップが入ったリールカセットをチップマウンターからの要求に基づいて入れ換えます。
リフロー工程:チップ部品が搭載されたプリント板をリフロー炉に通します。炉の熱によりクリームはんだが溶けて、チップ部品とプリント基板が溶着されます。興味深いのは搭載されたチップの位置が多少ずれていても、溶融はんだが持つ表面張力で正しい位置姿勢に矯正される点です。いわゆるセルフアライメントです。この工程では温度管理以外の人手の関与はありません。
実装検査工程:チップ部品が、正しく搭載されているかをカメラで検査します。不良品を後工程に流すことが許されない検査工程では、良不良のはっきりしないグレーなものは全て不良とするため、数十%がこの工程でラインオフされます。ラインオフされた実装プリント基板は、プロジェクターという機器を使って目視で再検査する後処理が必要となります。
<ハードディスク自動組立ラインの場合>以前、自動組立ラインを開発して、フィリピン、タイの工場へ導入した経験があります。ハードディスクの記憶容量が大きくなるにつれ、ドライブの組立環境(クリーン度)が年々厳しくなってきたため、クリーン対応したロボットを使って、発塵の原因となる人手作業を減らし品質を安定化することが目的でした。ラインは円板積層、円板ネジ締め、バランス測定と修正、円板バーニッシュ、ヘッドユニット挿入、カバー搭載、カバーネジ締めといった工程を自動搬送コンベアでつなぎ、15秒タクトで運用しました。
この自動組立ラインは、工程間のワークの移動、各工程の作業を自動で行います。人は各工程の部品の供給を行います。オフラインでの段取りとして供給部品のトレイへのセットがあります。たとえば、ネジは事前にネジトレイに振込んでおきます。また、ケーブルと一体になったヘッドユニットは専用トレイにロボットが把持しやすい様にケーブルフォーミングしてセットしておきます。
IoT/AIを進めるに当り、人手が関与する管理項目をいかに少なくするかといった取り組みも、併せて推進していくことがAI分析の精度向上につながると思います。しかし、機械加工の場合と違い、部品の供給が伴う実装組立の場合、多くの課題があると思います。
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