204加工の段取りとIoT・AI

 ものづくりにおいて、切削加工といった実作業以上に段取り作業が重要となるのはご存じだと思います。ここでは、実際にどのような段取りが発生しているかについて、設備設計していた当時の工作工場での記憶に基づいて記述します。

 <旋盤加工の場合>ワークをチャックに取り付け、加工に必要なバイトをセッティングします。片刃バイト、突切りバイト、穴ぐりバイトなど加工に必要なバイトを90°毎に回転できる刃物台に取り付けます。通常刃物台には4つのバイトを搭載することができます。それぞれのバイトの高さをワークの軸芯高さにするため、シムをバイトと刃物台の間に何枚か入れて調整します。加工手順に沿ってバイトを選択して加工します。加工が終わると、今までチャッキングしていたい部分を加工するため、一旦ワークをチャックから外し、加工済みの端部をチャックします。端部の加工し完了です。

 旋盤の場合、加工速度も速く、段取りに必要な時間の割合は小さく、効率がいい加工です。部品設計はなるべく丸物にする所以がここにあります。

 <フライス加工の場合>6面加工の場合、ワークをフライス盤の加工ベースへ6回チャキングする必要があります。刃物であるエンドミルは1つしか取り付けることができないため、刃物交換にも時間がかかります。しかし、平面を精度よく加工するためには必ず必要となる加工方法です。

 <ボーリング加工の場合>フライス加工と同様に刃物であるドリルは1つしか取り付けることができません。大きな穴をあけるためには、小径ドリル、大径ドリル、面取りドリル、リーマといった刃物を順次取り替えながら加工します。フライスほど段取りに時間がかかりませんが、加工時間に対して段取りの比率は大きくなります。精度を必要とする穴ぐり加工の場合、治具ボーラーを使います。この加工にはドリルの代わりに穴ぐりバイトが使用されますが穴径が小さくなると、穴の深さに応じて専用刃物を作るところから段取りが始まります。

 <マシニングセンターの場合>以上は汎用工作機械による作業です。最近はマシニングセンターが主流です。マシニングセンターには3軸、5軸タイプがありますが、いずれもあらかじめ数十個の工具(刃物)を搭載しており、必要に応じて自動で交換して加工を行います。ワークの移動は3軸の場合XYZ方向に位置決め、5軸の場合はさらに2つの姿勢を任意に決めることができます。もちろん自動です。マシニングセンターの場合ハードの段取り作業も全て自動です。一方、プログラミングなどソフト段取りが必要となりますが、外段取りできます。マシニングセンターは各種センシング機能も搭載しています。

 加工したワークの寸法測定など膨大なデータの収集も、3次元の自動測定器を使えば、プログラミング以外の段取りは無くなります。汎用工作機械の場合、前述したとおり必ず人手による段取り作業が必要となります。ものづくりにおいて、段取り7割、8割と言われた作業が自動化されることで、管理項目が大幅に削減されます。

 IoT/AIを進めるに当り、人手が関与する管理項目をいかに少なくするかといった取り組みも、併せて推進していくことがAI分析の精度向上につながると思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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