199振動と熱(その2)
製造工場では製品の品質を安定させるため、製造の各工程において温度、圧力、濃度などの管理値が決められた基準値の範囲に収まる様に、常時監視、チューニングを行っています。
しかし、バラツキ幅に周期性がある場合や、オフセットが時間と伴にずれていくドリフト現象がある場合は、その原因を突き止めて対策する必要があります。その根本原因の多くは設備が持つ固有の振動や熱による線膨張です。以下にブログ№161の追加事例を掲載します。
<振動の事例>
大学の卒論のテーマが「旋盤の剛性について」でした。円柱状の金属を旋盤で加工すると条件によって、円周上の表面に周期的な鱗状の模様が現れます。いわゆるビビリといった現象です。表面粗さ、寸法精度には問題がないのですが、見た目が良くなく商品価値としては下がってしまいます。卒論ではこの原因調査がテーマとなりました。ビビリ現象は旋盤自身または材料が持っている固有振動数と関係があると仮設を立てて、調査しました。
旋盤の主軸部、刃物台、心押台の周辺箇所をインパクトハンマーでたたいて、固有振動数を測定しました。材料については形状、ヤング率と質量が分かっていたので、計算で求めたと思います。原因は刃物台に絞られ、モデル化し検証しました。刃物台にはバイトが取り付けられていますが、バイトの突き出し量でその系の固有振動数が変わり、突き出し量によってビビリが発生したと結論付けたと記憶しています。
ものづくりをする中で、顧客の要求仕様を満足しているにも関わらず、見た目、見栄えが良くなく商品としての価値が下がってしまう場合があります。(曲がったキュウリは、新鮮さ、味に問題がなくても消費者からは敬遠されます) 今まで、IOTに必要となるセンシング対象として、温度、圧力、電流、位置誤差などを考えていましたが、見た目、見栄えなどを含めて改善対象とすると、製造設備の諸元、材料の諸元や治具、工具の取り付け誤差なども対象にしていく必要が出てくると思います。
大切なのは、対象となる不具合がなぜ発生するか、その仮設をきちっとたてて、そこに登場する要因をセンシングすることだと思います。
<熱の事例>
製造現場への設備の設置、動作確認、チューニングは特に大変です。工場で生産活動がされていない就業後の時間帯、休日での作業となるためです。ある自動組立ラインの導入も5月の連休中に行いました。工場は連休中のため、空調は効いていませんでしたが、プロジェクト関係者以外は誰もいなかったので、のびのび作業を進めていました。順調に作業が終わり、予定通り連休明けにはラインを引き渡すことができると考えていました。
連休明け、工場の製造技術部門の立ち合いの下、ラインを稼働させました。散々な結果でした。ほとんどの工程でロボットの位置決めがずれていて、まともに組立ができない状況でした。
原因は単純なものでした。休日中にロボットの位置調整(ティーチング)をした時の環境は空調がなく、休日明けのライン稼働時には空調が入っていました。温度差による、ロボットを含めた設備自身の熱伸縮現象による位置ずれであることは明白でした。
単純なミスですが、ティーチング前にプロジェクトメンバーの誰一人も気が付かなった点が残念でした。
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