196ワークショップ
「私たちは、日々新たな問題に直面しています。過去の経験が通用しない問題は、新しい能力や考え方を身につけることで解決を図ろうとします。学習を繰り返すことで、問題に対処し成長していこうとするのです。組織や会社でも同じことが言えます。一人ひとりが持つ知恵や能力には限りがあります。たくさんの方の力を合わせることで大きな問題に対処していきます。組織も絶え間ない学習を通じて、新たな解決策を創造し、未知の問題に立ち向かっていきます。」
「ワークショップとは『主体的に参加したメンバーが協働体験を通じて創造と学習を生み出す場』のこと。参加者同士の対話を重視した手法です。参加者が受け身になりがちな会議や研修では手に負えない複雑な問題が増えています。こうした中、幅広い分野で求められている技法です。」
これからはじめるワークショップ 堀公俊 著 日経文庫より
以前、IoTの商談で2日間、タイのセメント会社を訪問したことがありました。初日に現地工場を見学させてもらいました。工場の敷地全体が見渡せる鉄塔の展望エリアに案内されました。(横浜のマリンタワーほどの高さでした) 遥か遠くには石灰岩の山があり、大型重機で採掘しているように見えました。セメントの製造工程は、そこから始まります。
原料工程は、採掘した石灰岩を一定の大きさにミルで粉砕します。焼成工程は、石灰岩を高炉と回転型の炉を通して、クリンカという中間材料を製造します。炉を高温にするために、大量の石炭を使います。この温度を規定通りにコントロールすることが、品質の良いセメントを製造する決め手になります。次の粉砕工程で、最終的なセメントの粉に仕上げられます。すべての工程が全自動になっています。燃焼温度、回転炉の回転速度、圧力などのデータは、中央管理センターに集められ、昼夜オペレータによって監視されています。また中間材料のクランカは日に何回か、サンプルとして人手により採取され、センターにある分析装置で品質チェックします。
次の日、工場の講堂に30余名の若い技術者が集められ、その前で私たち日本人のエンジニアがIoTでなにができるか、自動化でなにができるかをテーマにプレゼンをしました。プレゼン終了後、3グループに分かれ、ワークショップが始まりました。ファシリテータは日本人のエンジニアです。
最初は現状抱えている、各部署、各人の課題について討議し、そこで一旦グループ発表をしました。ここで、課題の共有ができ、さらに新たな課題が追加されました。次にその課題の効果と先のプレゼンで説明があったIoT、自動化を使ってどのように解決できるかを討議して、同じく発表を通して、共有化を図りました。
次に、各グループの検討内容、課題、効果、対策について、どのように実際に進めるかを決めました。ファシリテータから重要度と緊急度の2軸からなる、4象限に分類するように指示され、全体で討議しました。最終的に、セメント製造にかかるコストのほとんどが、材料費とエネルギーであり、これをIoTで解決するといった内容が、最初の取り組みテーマになりました。そのほかにも、石炭採掘時に、ショベルカーの爪が折れて、石灰の中に混入し、後工程の設備が破損してしまうなど、設備の故障予兆ができないかなど、いずれも素晴らしいアイデアが出てきました。
ワークショップとは、会社の研修の中で、好き嫌いなくやらないといけない一種のお決まりツールでしかないと考えていましたが、今回の訪問で、問題解決に非常に有用なツールであると気づきました。タイの技術者たちは早速、実行プランの作成に入りました。
0コメント