195無いから尚のこと

 製造業では、ブランドやビジネスモデルだけで高利益率を実現するのは難しい。同じようなものを同じぐらいの価格で売っていても各社で利益率が異なるのは、生産性を考慮した設計(DFM:Design for Manufacturing)や購買・調達なども含めた生産技術力に差があるからだ。実際、ファブレスで知られていても生産技術を重視している企業は少なくない。ファブレスだから利益率が高いのではなく、生産技術力が高いから利益率も高いのだ。

 その代表格といえるのが米アップル(Apple)である。同社は「iPhone」や「MacBook」を自社で生産していないが、その生産に使う加工技術や設備に関しては綿密に自社で管理している。少し前の分析だが、製造業の設計革新や原価管理に詳しいプリベクト代表取締役の北山一真氏は、アップルについて、「利益の源泉となる固定費部分だけを管理し、変動費部分は外注している」と指摘する。そして、固定費部分に当たる加工設備や金型などに積極的に投資し、高利益率を実現しているのである。

 以上、日経クロステック 記者の眼 2020.02.10 より

 この記事を読んで、機械設計にも同じことが言えると思います。

 以前は、生産技術の自動化設備の設計部門では、世の中に1つしかない設備を、ねじ、歯車、ばねといった機械要素設計から機構、構造を設計し、それを制御するためのリレー回路やシーケンサープログラムの設計をしていました。

 時代と伴に機械要素は購入品へ、回路要素もパワーユニット、サーボユニットなど購入品で賄えるようになりました。さらに最近では、1軸タイプのロボットを購入し組み合わせることで、組立設備の大半ができてしまいます。設計らしい設計はワーク、パーツを把持する部分ぐらいです。おかげで、短期間に設備を提供できるようになりました。

 一方、「ロボットユニットを購入するからロボット設計はもうやらなくてもいい」、という考えを持つ人もいますが、これは間違っています。購入品を使用するからこそ逆に、ロボット設計ができないといけないと思います。

 市販のロボットユニットは標準化されています。サイズ、出力が段階的に用意されています。決して、無段階に選択できるものではありません。設計者は設備がちゃんと動作しないといけないので、少々出力が大きいものを選択したくなります。これを始めると大変なことになります。

 直動型、回転型の1軸ロボットを6台組み合わせれば、6自由度のロボットになります。ロボットを設計する時、最初にどのくらいの質量のパーツをどのくらいの加速で動かす必要があるかを決めます。ロボット先端の軸にちょっと余裕を持たせ、出力の高い1回り大きいユニットを選択すると、次の軸はパーツ+先端軸の質量を考えて選択します。やはり余裕をもって少々出力の高い1回り大きい・・・・・以上を6回繰り返すとぜい肉だらけのロボットになってしまいます。

 購入品を使う場合においても、ちゃんと設計することが求められ、購入品に適合するものがなければ、購入品を改造したり、やはり自分で設計したりする必要があります。それが、他社と差別化をする生産技術です。

 「工場が無いから尚のこと生産技術を重視する。機械設計をしないから尚のこと機械設計を重視する。」無いから尚のこと重要な事柄は沢山あると思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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