194 2種類のデータ
データにはアナログとデジタルの2種類があります。IoT/AIを進めるに当り必要となるのが、ご存じの通りデジタルデータです。このデジタルデータを活用すると様々なことができますといったのがDXです。また、データには人が作ったデータと物理現象で作られるデータの2種類があります。金融や商社などのビジネス分野において、取り扱われるデータは予算額、決算額、売り上げ、物品数、従業員数などのビジネス活動から発生するデータです。そこには誤差はありません。一方、気象予報などで取り扱うデータは温度、気圧などの物理現象のデータです。そこには誤差が含まれています。
ものづくり分野は2種類の軸があります。一つはSCMの軸で人が作ったデータを取り扱います。もう一つは製造プロセスの軸です。製造プロセスは物理現象をコントロールして製造するため、データには誤差が含まれています。製造品質の安定化を図るためには、いかに誤差の少ないデータを取得するかが重要な課題の一つです。そしてそれができるのは、システム会社でも、設備メーカーではなく、ものづくりの現場です。
あるプロセス系の工場へ、異常予兆検知のAIシステムを導入するために、現地調査からフィージビリティースタディーを1年かけてやったことがあります。異常予兆を検出するためには、まず十分な製造データ、プロセスの条件データと、その結果出来上がった製品の品質レベルがどの程度になるかの結果のデータが必要になります。過去に遡ってそれぞれのデータが、時系列または製造ロットと紐ついていることが必要となります。その紐ついたデータをAIシステムで学習することで、予測モデルを作り、その予測モデルに直近の製造データをインプットすることで、実際の結果が出る前に、品質のレベルを予測します。(異常の予兆を検出する)
従来も、品質レベルが芳しくない場合、そこから原因を調査、分析し対策を立てていましたが、予測結果に基づいて、この改善のPDCAを回せば、不良が出る前に、改善することができるので歩留まりが向上するといったシナリオが成り立ちます。
特にプロセス系の工場の場合、製造リードタイムが数週間になることも、まれではありません。条件設定やチューニングを行っても、それが良かったのか否かをすぐに知ることができないので、AIの導入は有効であると考えられています。AIシステムは専門メーカー各社から提供されているので、購入は容易です。しかし、AIシステムを導入する前に、やっておかないといけないことが山ほどあります。
最も重要なのが、データがあるのか? です。プロセス系の工場の場合、製造そのものは大型の自動化設備で行われています。オペレータはその状態を常に監視して、規定の条件の中に納まっていなければ、設備をチューニングします。対象の多くは、温度、濃度、圧力、ラインスピード、時間などがあります。このデータがどのような方法で、どのような頻度で採られ、どこに格納されているのかが、明確になっていて、初めてデータがあると言えます。またデータがあっても、AIシステムで分析するのに十分な量、質のデータであるのかも、重要です。
上記フィージビリティースタディーにおける、異常予兆の検出信頼性は7割程度であり、実運用への適用は見送られました。信頼性を向上するためには、データに含まれる誤差やノイズ成分を徹底的に取り除くことと、異常予兆と相関が高い製造プロセスのデータ量を増やすことだと思います。そしてそれができるのもやはり、システム会社でも、設備メーカーではなく、ものづくりの現場です。
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