192直交ロボット

 自動化に使用される代表的なロボットには、直行型、スカラー型、多関節型があります。その中で直交型ロボットは設計自由度が高く、多くの製造設備内に組み込まれています。過去に電話線配線設備、 (Desk Top Factory)、ネジ締め設備、バランスウェイト供給設備、シール貼付設備などに直交ロボットを組み込んできました。ここでは、電話線配線設備に組み込んだ直交ロボットについて記載します。

 まだ携帯電話が普及する前、固定電話の新規加入や入れ換えが発生すると、電話局側で配線ケーブルの接続や切断をマニュアル作業で行っていました。このマニュアルでの配線作業を自動化するシステムを開発したことがあります。本局からのリモート制御でロボットが完全自動で配線します。

 ロボットで行う場合、配線ケーブルの代わりにマトリックスボードと接続ピンを使います。縦100mm×横200mm程度のマトリクスボードの分離スル―ホールに対してφ1mm×長さ10mm程度の接続ピンをロボットが挿入抜去することで配線します。狭い局舎内にマトリックスボードを沢山敷き詰めるため、マトリックスボードを数百枚取り付けるフレームは縦置きで2列になっています。XYZθロボットがその縦置き2列のフレームに挟まれる格好に設置され、θ軸(反転機構)を使って両フレームのマトリックスボードにアクセスします。このXYZθロボットには接続ピンを把持する4つ爪とマトリックスボードの位置を検出するレーザーセンサーが搭載されています。ロボットの作業エリアは長さ(X)4m、高さ(Y)2m、幅(Z)0.5mほどになります。接続ピンとスル―ホールの位置合わせ精度は±0.1㎜程度だったと思います。

 このロボットを開発する際の課題の一つに長さ(X)方向の精度保証でした。位置合わせ精度は±0.1㎜を保証するためには、ボールネジを使用します。しかし、長さ4ⅿにおよぶX方向の移動ができるボールネジは標準品にはありませんでした。そこでX方向の機構をラック&ピニオン方式の移送機構と精密ボールねじ方式のΔX機構の2段階構造としました。ロボットの動作手順は次の通りです。

①マトリックスボード上にある5㎜□のポジションマーカーの付近に移送機構とボールネジのY機構で移動します。

②移送機構は移動が完了すると電磁ソレノイド式のストッパー機構により、フレームに固定されます。

③ポジションマーカーの正確な位置をΔX機構とY機構を使ってレーザーセンサーで探索します。

④指定されたマトリックスボードの指定のスル―ホールへΔX機構とY機構を使って移動します。マトリックスボードの表面にはポジションマーカーを起点に縦横にパターンが敷かれていて、ロボットは、そのパターンをレーザーセンサーでトラキングしながら指定のスル―ホールまで移動します。

 この直交ロボットを組み込んだ電話線配線設備は、自動MDFとして全国で1,000システムほど稼働しています。

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