190タイヤ業界(その4)

 日経ものづくりの2020年9月号の特集の中に「釘を刺しても穴が開かない世界初のゴム×プラスチック」といった記事があります。ここでその一部を取り上げ、自らの経験に基づいた見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 B社が開発した新材料「SUSYM(サシム)」。その特徴は合成ゴムの成分とプラスチックの成分を分子レベルで結合させ、両者の特徴を併せ持たせたことだ。~中略~

 サシムが示す物性は独特だ。例えば、穴が開きにくいという「耐突き刺し性の高さ」。通常のゴムは先端が鋭利なくぎを押し付けるとすぐに穴が開いてしまう。サシムは局所的に力を加えても、プラスチックの特性で破断に堪え、ゴムの特性で大きく変形してなかなか穴が開かない。~中略~ これ以外にも、従来のゴムにはない特性をプラスチックとの融合によって実現している。その1つが、穴が開いたり傷が付いたりしても、熱を加えるだけで塞がって修復できる再生・修復性だ。~中略~

 2020年8月時点、サシムはまだ商品化に至っていない。穴が開かないタイヤの実用化に向けたサシムの開発を進める一方で、B社は他社とのコラボレーション(共同作業)などによる、サシムの幅広い応用に期待をかける。成功すれば、同社が狙う新事業開拓を実現するための起爆剤となる可能性を秘めているからだ。

 日経ものづくり2020年9月号より

<経験と見解>

 インターネット情報によると、B社は素材の開発以外にもタイヤの中に、発電機能を備えた加速センサー、温度センサー、圧力センサーを組み込み、タイヤ自身の状況を検出したり、路面状況を判別したりする技術を開発しています。

 たとえば、新素材で空気が漏れないタイヤができればタイヤ自身の状態を監視する必要はありません。そのタイヤに搭載されている各種センサーは路面の状況を監視するセンサーとして使えます。全世界の路面状況がリアルタイムに把握できることになり、そこに新しい事業が見えるかもしれません。

 同じくインターネット情報によると、B社はものづくりの面で、「部材工程」「成型工程」「加硫工程」をモジュール化した全自動システムを構築し、稼働しています。全自動ということで各モジュールは100を超えるセンサーを装備して、そこから得られる情報に基づいてエラー検出や自動補正をしているとのことです。重要なのは全自動化を進めたことにより、品質の安定した製品を製造すると同時に、品質の良い情報(センサーデータ)を得られることです。

 たとえば、将来的にこの情報を使って、機械学習し、AI分析させることができます。品質コントロール、プロセスコントロール、エネルギーコントロール、生産コントロールをAIで制御することができます。

 スマートファクトリーやDXを進めるにあたって重要なことは、具体的な製品や目的がはっきりしていることと、必要なデータが高い品質で収集できることだと思います。データの展開先には新たな事業が待っているのかもしれません。

参考資料

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2016052502.html

https://nissenad-digitalhub.com/articles/ai-for-tire/

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/library/process/pdf/process_01.pdf

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/759137.html

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/735194.html

https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/732/282/html/15.jpg.html

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