185自動機のモジュール化

 日経ものづくりの2019年8月号の特集「世界の最新スマート工場」の中に自動機のモジュール化についてUMCエレクトロニクス中国・東莞工場の記事があります。ここでその一部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 自社開発のLCA(ローコスト・オートメーション)設備には、ワークに応じて臨機応変にラインを構成したり、不具合が生じた際にすぐに装置や部品を交換したりできるメリットもある。このメリットをさらに引き出すため、東莞工場は装置のモジュール化を図っている。すなわち、装置をプラットフォーム部とアタッチメント部の2つの部分で構成する方式にした。

 プラットフォーム部は、ワークの搬送など工程によらず共通に必要な機能を持たせる部分。ワークを扱う台の高さをそろえて装置同士を連結し、ワークを直接受け渡しできるようにする。装置の幅は共通化し、プラットフォーム毎交換したり、メンテナンスしたりするのを容易にした。ラインを一部変更する場合などは幅の同じプラットフォームを用意しておいて入れ換える。ラインから外したプラットフォームは整備した上で、他のラインへ投入できる。~中略~

 「装置を見ジュール化しているといっても、生産ラインを標準化しているわけではない。モジュール化は顧客が求める品質、コスト、納期などをできるだけ最適に実現するための手段。だから、生産ラインは顧客と品目によってフルにカスタマイズしたものになっている。」

日経ものづくり2019年8月号より

<経験と見解>

 以前、ノートPCや携帯電話の製造ライン向けに、多機能組立システムといった設備を開発、導入したことがあります。考え方が上記抜粋記事のLCA設備と類似しています。

〈多品種変量生産の課題と施策〉

 多品種変量生産に対応する混流生産ラインでは機種変更のため段取り替えが必要となります。マニュアルラインでは治工具、試験プログラム、供給部材の入れ替えを1分以内で行います。また、繁忙期と閑散期には1工程当たりの作業量を変動させます。さらに日々の改善活動による標準作業の変更のため、作業手順の組み替えが必要となります。したがって作業変更への自由度を確保しながら自動化を進める手法の確立が課題となります。

 その施策の一つとして、汎用ロボット、ワーク搬送、パーツ供給、ツールチェンジャを搭載した多機能組立システムの開発に取り組みました。

〈主要組立要素〉 

 ロボットで複数の作業をする場合、複合ハンド方式も考えられますが、自由度の点でツール交換方式が有効です。この方式において、最も重要な機能ユニットがツールチェンジャであり、ロボットのエンドエフェクタとして搭載されます。ツールには貼り付け、組み付け、接着剤塗布、検査プローブなどがあり、必要に応じてロボットが交換作業を行います。多機能組立システムでは、ツールを0.9秒以内で交換できます。また、ツールへのパワーサプライは真空2系統、圧気2系統を備えていて、必要なツールが搭載されていれば、段取り替えや作業の変更は全自動で行うことができます。

〈組立要素のシステム化〉

 ロボット本体は高速、高精度を兼ね備えているパラレルリンクロボットを選択しました。システムの設備化にあたり、現状のマニュアルラインの作業性を考慮し、フットプリントは700mm×700mmとしました。

 ワーク供給は混流生産に対応するため、2ステージを持った回転テーブル型の搬送ユニットを作業者側(システムの前面)に配置しています。パーツ供給はライン作業者と干渉しないように、システムの後面に配置しました。また、段取り替えに伴う頻繁なパーツ交換に対応するため、供給機をユニット化し、プラグイン機能を施しました。これによりパーツの交換に伴う工数を大幅に削減することができました。

 ワークとパーツのばらつきに対応するため、視覚認識機能(カメラ)を搭載しています。ワークを認識するカメラは上方から見下ろせる位置に固定し、パーツを認識するカメラは下方から見上げる位置に固定しています。

 これらに先のツールチェンジャを搭載し、多機能組立システムを構成しました。このシステムは、既存ラインのマニュアル作業との親和性に優れ、多品種変量生産の自動化、ロボット化を可能としました。

参考資料

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/5/33_33_314/_pdf/-char/ja

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

ものづくりの普遍のテーマに取り組んできた生産技術者の備忘録です。 スマート工場に向けた自動化、IOT、AIの活用について記載しています。 ご相談は下記のシマムラ技術士事務所へ。 It describes Automation and IoT/AI for smart factories. For consultation, please contact the following office.

0コメント

  • 1000 / 1000