175品質安定化ライン
品質安定化ラインついて、TFS自動化研究所 村山省己氏の「グローバル自動化ラインの基礎知識[加工・組立ライン編]」日刊工業新聞社の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
品質安定化ラインとは品質を工程能力指数(Cp値)で評価する管理手法で管理するラインのことである。例えばCpk=1.33は百万個に60個の不良発生率60ppmで表す。自然界では揺らぎがあり、バラツキを0にすることは不可能である。その為量産においては工程設計段階で品質保証の為に品質管理値(品質規格)を設定し、合否判定できることは品質安定化ラインでは必須になる。品質安定化ラインの実現の為には設備の標準化による機器の統一化は重要であり、精度検査の機構や計測機器を設備に組み込む必要がある。この点においても食品製造設備においては材料の性状が不安定であることと、生産に使用される塩類の存在や水の影響を受けるので通常の工業製品より食品製造装置は設計が難しいことが多い。~以下略~
<経験と見解>
抜粋記事の中で注目する点は、「食品製造設備においては材料の性状が不安定であること‥‥」です。設備による製造不良、チョコ停の最大の原因の一つに組み込む部品のばらつきがあります。食品製造だけでなくすべての製造に共通する課題です。以前、ハードディスクドライブの自動組立ラインを開発したことがあります。そこでの事例です。
自動ネジ締め機の場合。当初100回に1回程度どうしてもネジが着座しないエラーが発生していました。事前の自動ネジ締機の評価では、そのようなエラーは発生していませんでした。原因がわからないまま、ネジ締めの位置の調整やトルク調整を繰り返し行いましたが、一向に改善されませんでした。
そこでネジ自体に問題がないか調査しました。ネジが着座していない不良サンプルを樹脂で固め、断面が見えるように削り、工具顕微鏡で観察してみました。結果、おネジの山の先端が2つに割れていることが分かりました(ツインピークス)。めネジがおネジの正しい谷に入らないで、この割れ目に噛み込んで着座できなかったことが判明しました。
このツインピークスは転造ネジ特有の現象です。転造ダイスで成型する過程でネジ山が2つから1つへと変化しますが、転造量が少ないと2つ割れの状態のままネジとなります。人間がネジ締めを行う場合には、着座する前に硬くなると、当たり前のごとく1回ネジを緩め、再度締め直すといった工夫をしています。以降ネジ締機のシーケンスに、着座前にトルクアップしたら、巻き戻し、再度ネジ締めといったリトライ機能を追加しました。
自動バランス測定・修正機の場合。円板(媒体)の回転バランスを修正するため、円板を回転させてアンバランス量とアンバランスの位置(位相)を測定し、アンバランス量に相当する質量のおもりの位相を180度ずらして貼り付けます。回転の位相検出は円板を挟み込んでいるスペーサ(アルミ製のφ20㎜×5㎜程度の円環)の表面のマークをレーザーセンサーで読み取ります。マークは黒い油性ペンで円環の軸方向に引かれた線です。レーザーセンサーはその線のエッジを検出します。アルミの表面粗さ、油性ペンの濃淡などのばらつきがあり、当初やはり100回に1回程度エラーが発生していました。対策としてはレーザーセンサーのチューニングしかありませんでした。
抜粋記事にある様に、各組立工程の品質を60ppmに抑え込むためには、部品の品質を上げるか、バラツキがあっても問題なく組立、計測ができる自動化に対応した工法を検討する必要があります。ネジ締め機の様に、マニュアルでは問題なくできていたのにということは多々あることです。
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