173設備の改造とチューニング

 ものづくりの現場において製造設備の果たす役割は非常に大きなものです。マニュアル作業では到底太刀打ちできない大幅なQCDの改善が可能となります。一世代前までは、その設備は自社で開発することが普通でした。現在はロボットメーカーをはじめとして、専門メーカーからほとんどの設備、システムを購入することができます。新規ラインの導入、変更など迅速に対応することができ、今後もこの傾向は続くと思います。問題は購入した設備をそのまま稼働させて生産しても、同じ設備を購入した他社との差別化を図ることができない点です。そこで設備改造やチューニングなどによって、100の能力を120、130にアップする努力が常に必要となります。以下は過去の様々な経験からの事例の一部です。

<車の改造>

 学生時代に自動車部に所属していました。公道を走行するラリー競技と専用のダートコースを走行する競技に参戦するため、定期的に走行練習をすることが主な活動になっていました。ほとんどの部員がバイトで貯めた10万円ほどの資金で中古車を購入していました。この金額で手に入る車といったら、サニー、カローラ、ギャランの10年落ちの車です。

 このレベルの車で競技会に勝つためには、ドライバー、ナビゲーター、カリキュレーターの腕以上に、車のチューニングが重要となります。足回りでは、ショックアブソーバーを硬いものに交換し、コーナー性能を高めるために、前輪をハの字になるようにセッティングしました。山間部走行時の転倒、落下に備えるため、4点シートベルトやロールバーといった安全装備品を車内に取り付けたり、夜間走行ではより視界がクリアになるように、ハロゲンヘッドライトに交換したり、フォグランプは道路の両脇を照らすようにセッティングしたりしました。エンジン関係ではキャブレター(ガソリンを空気と混合する機器)をシングルタイプからツインタイプへ交換したり、吸気効率を高めるバルブタイミングにするため、バルブを開閉するカムの位相を変更したりしているメンバーもいました。

<ロボットの可搬重量>

 ある日、ロボットハンドを設計しているメンバーから、「ハンドリングするワークが大きくなった影響で、ロボットハンドも大きくなり、メーカー指定のロボット可搬重量を超えてしまい、100%のスピードでロボットを稼働させることができません。1ランク大きなロボットに変更する必要があります。」との報告を受けました。

 そもそも可搬重量とは何の制約条件に基づいているのか?を考えると、重量が増えると、それを搬送するためのモーターの出力が必要となります。モーターの出力を上げるためには、電流を多く供給する必要があります。電流を増やすと、モーターの温度が上がります。限界温度を超えると、モーターが劣化して、以降既定の出力がされなくなってしまいます。だから可搬重量を超えてはいけません、となります。

 ここで大切なのは、どのような条件で?ということです。このロボットはどのような環境で、どのような稼働条件の時に可搬重量が決められていて、モーターメーカーの保証の対象になっているかを考える必要があります。

 このロボットの仕様環境は0℃~40℃となっています。このロボットを導入する工場は25℃で管理されています。ということは15℃のマージンがあります。早速ロボットメーカーに問い合わせると、案の定外気温度設定のパラメーターをもっており(取説には書かれていない)25℃に設定しました。当初の可搬重量の課題がクリアされました。

<一般的な改造とチューニング項目>

 機械本体:最高速で動かす 移動距離短縮 動作間の待ちをなくす 重ね動作の検討

 治工具型:外段取り化 ワンタッチ装着 クイックチェンジ 重量物パワーアシスト

 これ以外にソフトの改造、チューニングに関しても洗い出してみることが大切です。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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