172ヒューマンエラーと自動化

 ヒューマンエラーと品質改善に関連して、鈴木宣二技術士事務所 鈴木宣二氏の「ヒューマンエラーをなくすための仕組み作り、教育の仕方」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

 ISO9001:2015の審査で各企業を廻ると流出不良の大半はヒューマンエラーという企業が多い。しかも勘違いや、思い込み、聞き違いなどによって発生させてしまう。例えば出荷ミスをなくすためにダブルチェックやトリプルチェックをしている企業が多い。検査の人数が増えるたびに品質検査の工数が増えてしまうのだ。しかも品質検査人数を増やしても顧客に請求できない。

 ~中略~ 単純なポカミスとは「ぼんやりミス」、「うっかりミス」、「勘違いミス」、「横着ミス」などがある。長年同じ作業をしている経験者でもポカミスを発生させる場合がある。~中略~ 単純なミスを防止するためには次のような方法がある。

①「ぼんやりミス」→(要因)集中できていない→(対策)意識を高揚させる→(具体例)指差呼称、BGMを流す

②「うっかりミス」→(要因)注意散漫している→(対策)外部要因を与えない工夫→(具体例)チェックリストを用いて確認、5Sの徹底(余分なものは置かない)

③「勘違いミス」→(要因)思い込みが強い→(対策)作業手順の順守→(具体例)作業標準書による指導、上司や熟練者による指導

④「横着ミス」→(要因)ルール違反→(対策)ルールを守らせる→(具体例)個別指導

 以上、抜粋です。以下は「横着ミス」「勘違いミス」に当たる経験事例です。

 垂直多関節ロボット(仮称M6)の開発を始めて2年後、ティーチングプレイバック方式によるシステムが完成、実用化のフェーズに達しました。残念ながら社内への導入例は数えるほどでしたが、晴海で行われたFA展に出展中のM6を見たバレーボールで有名なA社から引き合いがあり、導入とあわせてエンジニアリングを手がけることになりました。

 そのエンジニアリングでは大変苦労した覚えがあります。その最大の原因はティーチング作業でした。M6の場合、ティーチングペンダントを使ってロボットを操作し、作業位置を1点ごと教示します。バレーボールの場合50ポイント以上を教示することになりますが、自由度の多さが教示のあだとなり、丸一日仕事となっていました。さらに大変なのは、ティーチング中に操作を誤り、ロボットを衝突させてしまうと、機構にズレが発生し、そこまで作成したティーチングデータが使い物にならなくなって、はじめからやり直しになることでした。

 6軸の機構にズレが発生しているので、キャリブレーションが必要となります。キャリブレーションとは、機構が持っている固有の座標系と絶対座標系に較正する作業です。ロボットの各軸の原点が理想とする絶対原点と何度ずれているかを測定し、そのずれ量をパラメータとしてロボットにインプットし、ロボットの位置、姿勢を正します。このキャリブレーション作業は2時間ほどかかります。

 キャリブレーションと再ティーチングを行うと1日で作業が完了できないので、キャリブレーションを行わないで再ティーチングのみを行ったことがあります。ティーチングプレイバックの場合は繰り返し位置決め精度が出ていればいいはずだといった判断でした。翌日、上司へ報告しました。すぐにキャリブレーションからやり直すように指示されました。理由は「ティーチングプレイバック方式は一時的なもので、次のステップとして、ティーチング対象を自動計測し、そのデータに基づいてロボットに絶対座標系を使って作業をさせるため。」でした。

 現在のロボットシステムを見てみると、自動キャリブレーション、センサーデータに基づいた自律作業ロボットが当たり前になるほど技術が進みました。

 人間が考え、作業する限りヒューマンミスはなくなりません。最終的には自動化だと思います。その過渡期には抜粋記事にあるような具体策を徹底する必要があると思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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