171チョコ停をしない設備
過去に大小含めて100余りの自動化設備の開発に取り組んできました。必ずといっていいほど、チョコ停問題が付きまとっていました。ネジのバラつきによるネジ締めの不良、チップ部品のバラツキによるピックミス、ティーチング調整不足によるコネクタの挿入ミス、照明調整不足による画像読み取り不良等々です。その中で唯一チョコ停をしない設備がありました。当時の電信電話局の指導の下に開発した設備です。
まだ携帯電話が普及する前、固定電話の新規加入や入れ換えが発生すると、電話局側で配線ケーブルの接続や切断をマニュアル作業で行っていました。山奥や離れ小島の無人局の場合、本局から作業者が出向いて工事をするため、2~3日新規加入者らを待たせることになっていました。このマニュアルでの配線作業を自動化するシステムを開発したことがあります。本局からのリモート制御でロボットが完全自動で配線します。結果、作業時間は3分となりました。自動MDFとして全国で1,000システムほど稼働しています。
ロボットで行う場合、配線ケーブルの代わりにマトリックスボードと接続ピンを使います。縦100mm×横200mm程度のマトリクスボードの分離スル―ホールに対してφ1mm×長さ10mm程度の接続ピンをロボットが挿入抜去することで配線します。狭い局舎内にマトリックスボードを沢山敷き詰めるため、マトリックスボードを数百枚取り付けるフレームは縦置きで2列になっています。XYZθロボットがその縦置き2列のフレームに挟まれる格好に設置され、θ軸(反転機構)を使って両フレームのマトリックスボードにアクセスします。このXYZθロボットには接続ピンを把持する4つ爪とマトリックスボードの位置を検出するレーザーセンサーが搭載されています。
配線接続手順は次の通りです。
①本局からリモートで配線接続指示が出るとロボットが起動します。
②ロボットはフレームの片隅に設置された接続ピン供給専用のマトリックスボードから1本取り出します。
③指定されたマトリックスボードの指定のスル―ホールへロボットが移動します。マトリックスボードの表面には縦横にパターンが敷かれていて、ロボットは、そのパターンをレーザーセンサーでトラキングしながら指定のスル―ホールまで移動します。
④把持している接続ピンをスル―ホールに挿入します。
⑤同様な動作を3枚のマトリックスボードに行います。
配線替えの場合内は最初に接続されているピンを抜去し、ピン廃棄ボックスに収容します。同じく3枚のマトリックスボードからピンを抜去します。抜去終了後配線します。
このシステムの最大の特徴は3枚のマトリクスボードを使って配線接続する点です。これにより同じIN/OUTに対して複数の配線の経路を選択することができます。例えば接続ピンの挿入抜去ミス、トラキング移動のミスがあった場合は、その経路をクローズして別の経路で配線接続すればいいわけです。リカバリーによって配線接続のリードタイムは長くなりますが、その発生確率も考慮して製品仕様化されています。
さらに、20年間無故障、メンテナンスフリーを達成するため、開発時において寿命評価、地震をはじめとする耐環境評価も徹底的に行いました。
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