165工場見学(その3)

 本ブログ№039では、工場の見学に際してIE視点、自動化設備視点、データ活用視点で記述しました。また、№084では製造の原価といった視点で記述しました。ここでは、プロセス系工場、組立系工場とクリーン工場の品質改善といった視点で見学した場合について記述します。

 プロセス系工場:プロセス系工場の特徴は、溶解炉、化学処理などの液槽、射出成型機など大型の設備を使ってものづくりを行います。大型設備は一度設置すると以降、移設はほとんど行われません。そのため、ものづくりの流れは設備の場所に合わせて動線が組まれます。必然的に複雑な動線になります。設備によっては建屋のフロアーが違ったり、中には建屋が違ったりします。その影響で2時間程度の工場見学では、ものの流れを理解することは難しいと思います。事前にその業界のものづくりの大きなプロセス、流れをインプットしておくことが重要となります。

 たとえば、メッキ工程の数十メートルにおよぶ大型設備の場合、以下を注意して見ます。

①材料や中間製品の投入場所またはメッキ処理終了後の取り出し場所を見ます。投入単位、投入時間間隔、投入前の中間製品の数、姿勢(縦置き平面置き)などが確認できます。

②処理工程は全自動でブラックボックスであることから、アナログメーターなどの計器類の数、種類(温度、圧力、流量)を確認することができます。

③壁面に貼られている表、グラフを見ることで管理ポイント(種類、基準値、リミット)やサンプリング間隔などを見ることが出来ます。

組立系工場:組立系にはプリント板へのチップを実装などの自動化の工程と総合組立、試験などマニュアル工程の2つがあります。マニュアル工程の場合、製品の変更、生産量に合わせて頻繁にレイアウト変更が行われます。自動化、マニュアルともものづくりの流れ、中間製品の量などは確認しやすいといった特徴があります。組立系の場合、材料、部品の供給状態も重要となります。海外工場では見学中に部品ショートといって供給タイミングが合わず、組立ラインが停止するといったが何度かありました。

自動化、マニュアルラインに共通する観察点は以下です。

①シグナル灯の状態を観察します。ラインには10個前後のシグナル灯があり、見学中に全ラインを見渡せる場所でシグナル灯の色の割合を確認します。稼働中は緑、待ちは黄、停止は赤として観察します(工場によって意味合いが異なる場合がありますので確認が必要です)。

②マニュアル作業が伴う箇所での治具や工具の活用状況を観察します。自動化ラインにおいても、部材の投入や処理後の取り出しはマニュアルであることが多いと思います。如何に製品に直接触ることなくハンドリングしているかは重要なチェックポイントです。

 クリーン工場:クリーン度100(パーティクルの大きさ0.5μⅿ)レベルのクリーンルームに作業者が入る場合は、前室において化粧を落とし、手を洗ってクリーンスーツ(髪の毛ネット、マスク、手袋、靴下とオーバーオールのスーツ)に着替え、クリーンエアーのシャワーを浴びてから入ります。クリーンルーム内はダウンフローで外気より正圧になっています。天井にヘパフィルターがあり、クリーンエアーが常時床に向かって吹き出しています。床は2重になっていて作業者や設備はグレーチング(空気が通る様に穴の開いた床)の上でコンクリートの底床は、そこから1メートルほど下にあります。

 ハードディスクドライブ組立の場合、クリーンルーム内での観察点は以下の通りです。

①組立対象となるワーク(中間製品)の搬送パスと天井のへパフィルターの間にものがあるかどうかを確認します。作業者の場合は組立作業中にワークの上に顔や頭がきていないか。設備がワークの上で動作していいないか。人にしても、機械にしても摺動箇所からは必ず発塵します。

②クリーンルーム内に発塵しやすいものが置かれていないか。通常のノートや鉛筆、段ボール箱がおかれていないかを確認します。

③部品も分離して供給しているかバルクで供給されているかを確認します。

 以上、工場見学は製造対象、環境などによって視点が異なります。さらに工場見学は短時間です。事前に大枠の流れを理解しておくことと、ポイントを絞ることも重要だと思います。

 そして、工場を見せる側の立場からは、せっかく工場を説明しながら見せたのだから、見た感想、意見、提案が欲しいはずです。工場見学後のミーティングの場では積極的なアドバイスを提案するように心がけることが大切です。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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