142導入が失敗する原因
導入が失敗する原因ついて、日本電気㈱ 相馬知也氏の「工場へのIoT・AIプロジェクトで発生するリスクと管理、社内部門間への説明の仕方」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
導入が失敗する原因:タイトルが少し重いと思われるかもしれないが重要なことなのであえて書いておきたい。筆者が多くの人たちと話しをして失敗原因の一番にあげているのは「人の仕事を奪うことを目的としてプロジェクトを進めている」ということである。これはIT系部門がプロジェクトを推進していく場合に多くみられる傾向である。過去から、ITの世界は人を減らすことを主たる目的としてきた。最近のAI活用でもRPAなどがこの分類にあたると思われる。このためプロジェクトの目的が最初から「製造現場人員のX割削減」の様なものになってしまう傾向にある。導入を検討し予算を確保する場合の理由としては一番簡単なものである。しかし、逆の立場になって考えた場合はどうだろうか。~中略~
利用する現場の反対にあえば、課題検討も導入検討も進まないばかりでなく、効果を出すための検討に協力を得られることもない。最終的に「導入の効果はない」といった結論になるように人が動いていく。明確な協力拒否にの場合もあれば、協力しているように見せかけて効果なしへの誘導をする場合もある。製造現場におけるAI/IoTの導入目的は「人を活用すること」でなければいけない。いかに現場が楽になるか、その空いた時間をどう活用していくか、その時間の活用によって経済的価値が何倍にもなるようなプランを作り、関係者に周知し理解してもらうことが必要なのである。
<経験と見解>
精密電子機器の自動組立ラインをフィリピンへ導入したのは1990年代の後半でした。その導入立ち上げのため、1か月余りの予定でマニラのへ出張したことがあります。
まずは現状のマニュアル製造ラインを見学しました。CR(クリーンルーム)内にある10本あまりの製造ラインは700ミリメートル間隔でオペレータが配置され、彼らたちは白いクリーンスーツをまとって、もくもくと組立作業をこなしていました。
勤務体制について聞くと、1日12時間の2直体制と聞き、間に何回か休み時間があるとは言え、厳しい労働環境だと言えます。昼休み時間になると、現場を離れ食堂に行く者、作業するライン上に顔を伏せて寝ている者など様々です。寝ているのは、昼食代を浮かすためだそうです。とはいえ、このような工場で働くことができるのは、選ばれた人たちであり、彼らにとって喜びであるとのことです。
自動組立ライン導入の目的は品質の安定化のためですが、作業環境の改善といった意味での自動組立ラインであってもいいと思いました。ところで彼らにとって一番の心配ごとは、自動化によって自分たちの仕事がなくなることにあります。幸い、ラインは完全自動化ではなく、マニュアル作業も必要でした。また、ラインは増設であり、現状のオペレータを減らすことなく、生産を増やす計画であったので、問題はなかったと思います。
自動組立ラインといっても、長年彼らが作業の中で工夫してきたノウハウをベースにチューニングする必要があります。彼らは心よくそのノウハウを教えてくれるだろうか、教えてもらう側も突然自動組立ラインをもっていって、おいしいところだけもらってチューニングしていいのだろうかといった思いがあったのは確かです。
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