140 AI利活用のビジネスモデル
AI利活用のビジネスモデルついて、岩手県立大学 近藤信一氏の「製造業のものづくり現場におけるAIの導入・利活用による新たな競争優位の獲得」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
ビジネスモデルとして何を記述するかについては幅がある。筆者は、ビジネスモデル(ビジネスシステム、事業システムと同意義)とは、ビジネスプラン(事業化に向かってのアイデアや構想)を、経営資源(ヒト・モノ・カネ・インフォメーション・ブランド)を活用して経済的価値に変換し、顧客価値を創造して利益を獲得するための構造とプロセスである。と捉えている。ビジネスモデルを単純にいえば、製品やサービスを企画・製造して販売していくための事業の仕組みである。つまり、ビジネスモデルとは、ビジネスプランを基にある特定の製品やサービスで収益を生み出す事業構造のことを指す。
ビ ジネスモデルで収益を上げる方法は、以下の2つに大別される。1つは、コスト削減(直接的に費用を削減するか、生産性を上げて間接的に費用比率を下げるか)をして収益を上げるビジネスモデルである。もう1つが、売り上げを増やして(新しく売り上げを創出するか、既存の売り上げを増加させるか)収益を上げるビジネスモデルである。2つの方法によりある特定の製品やサービスで収益を生み出す事業構造、これをビジネスモデルという。
誤解を恐れずに言えば「ビジネスモデルとは収益を生み出す事業構造のこと」であり、収益を生み出すには、①コスト削減と、②売上伸長(既存事業を伸ばす、新規事業を立ち上げる)、という2つの方法がある。コストを削減することは、従来から日本企業、特に製造業の得意技(カイゼン活動やQCサークル活動など)であり、AI導入によるさらなるコスト削減を目指している。一方で、AI導入により売り上げを伸長することは、ほとんど事例がないといえる。ただし、多くの企業はAI導入によりこの領域を求めている。
<経験と見解>
ものづくりの普遍のテーマがQCD+ESであることは間違いありません。中でも最大の関心事は、いかにコストを削減するかであると思います。いかに原材料費を削減するか、人件費を削減するか、仕損費を削減するか、エネルギー費を削減するか、労災費用を削減するか、だと思います。
たとえば、製造リードタイムが長いプロセス工場の場合、設備の条件設定を行っても、その結果が、2~3週間後にならないとそれが適切であるか否かが分かりません。適切でなければ再設定が必要となります。この時間のロスが、材料のロス、人権費、エネルギーのロスにつながります。設定条件データを活用して、製品の品質予測ができれば、良否判定にかかるリードタイムを1日に削減できます。といったようなことが可能となります。
たとえば、ある工場では既に歩留まり、直行率とも十分に当初の計画を上回っているとしたら、過剰品質の可能性があるのかもわかりません。歩留まり、直行率を落とさないで、SMTのはんだ印刷のはんだ量を10%削減する条件をデータ解析から求めることも可能だと思います。
たとえば、SMTラインの実装検査装置の虚報の発生率を半分に減らすことができたら、後工程の人手による目視作業が半分になります。前工程のはんだ印刷のデータや実装のデータから不良を予測することも可能だと思います。極端に言えば、工程内にある検査工程は、前工程のデータ分析で予測できるので、将来的に削減できるのかもわかりません。
抜粋記事にある様に、工場の場合コスト削減が中心となります。売り上げを伸ばす取り組みとしては、下記の例がそれにあたると思います。
以前、ハードディスクドライブの自動組立ラインを開発、導入した経験があります。その中で不良品を救済する機能を付け加えたことがあります。ハードディスクはその容量に応じて円板の搭載枚数1枚~6枚で対応していました。円板は表裏2面が記憶媒体となりますが、円板の製造上、表面または裏面に不良があり片面が使用できない場合が発生していました。この場合片面だけでも製品として使い、円板の廃棄を極力減らそうといった考えが出てきます。結果、0.5枚、1枚、1.5枚・・・といったように品種が倍となり顧客の選択肢が増えました。幸い、自動組立ラインはプログラムの変更のみで対応することができました。
本来あるべき姿は、不良を減らすためにはどうすればよいかを追究することだと思います。ただ、不良が出てもそれをうまく活用して、従来と同じレベルの価値を出すことができればベストです。また、製品の価値が下がったとしても、消費者にとって都合がいいものであれば、消費者の信頼を得ることができると思います。トータルの価値が従来と同等以上となるように考えることも必要です。
ただし、確実にいえることは、ロスがある事業構造でそのまま売り上げを増やすと、ロスも増えるということです。
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