138異常検知のセンシング
異常検知のセンシングついて、IMV㈱ 川平孝雄氏の「故障予知、異常検知のセンサの選び方、設置の仕方」といった記事が技術情報協会出版の書籍に掲載されています。ここでその1部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。
<記事の抜粋>
製造工場において、種々の回転機械は生産に直結する重要な設備であることは説明するまでもない。これらの重要な設備の故障予知を行う事は、生産を止めない為の非常に有効な対策となる。ここでは、その設備に関する故障予知、異常診断を進める上で最もよく活用されている振動センサについて、その選定方法や使用方法に触れていく。振動といっても、実際に目で見える振動から音として聞こえる振動、触れても分からない振動まで様々な振動が存在する。その為、振動は、温度や照度等の他の計測に比べ解析自体も非常に複雑で分かり難いものが多い。ただ、それだけ多くの情報が振動には含まれており、上手く活用する事ができれば設備診断を行う上で非常に有利なデータとなる。
<経験と見解>
入社数年後、プリンターの不具合の調査を依頼されました。小型レーザプリンターのサンプル画像において、何本かの筋ができてしまうといった不具合でした。当時のサンプル画像はメルセデスベンツのフロントガラスであり、あたかも雨が降ったように数本の筋が、フロントガラスの上についていました。これがプリンターの品質において良くないことは言うまでもなく、早急に原因を調査して対策する必要がありました。
ご存じの通り、レーザプリンターの原理は、画像情報を乗せたレーザー光をポリゴンミラーで感光ドラムに照射し、感光したところだけトナーが付着して、さらに紙に転写させるといったものです。当時の画像情報は600dpi(dot per inch)程度であったと思います。前述の雨が降ったような筋ができるのは、このdot間隔が一定でないと生じる現象です。その真の原因を突き止めるためのツールがフーリエ変換を応用した周波数分析です。
プリンターの機構は感光ドラム、転写ドラム、定着ローラ、ピックローラといった回転体を数個のパルスモータで駆動させますが、駆動力を伝達させるために、多くのギア列を構成する必要があります。プリントは一定の速度で行われるので、ギアを含めた回転体には周期性が伴います。(周期的特性)
ここでフーリエ変換が登場します。前記の周波数特性を持った様々な波が合成波となって、先ほどの一定ではないdot間隔の画像を作り出します。逆に、この画像結果を使ってフーリエ変換することで、どの周期の部品が原因であるかがわかります。このdot間隔を読み取る装置は世の中にあり、同時に合成波を検出しフーリエ変換します。その結果、伝達系のあるギアが原因であることを突き止めることができました。そのギア精度を高めることで、解決できたと記憶しています。
振動系のデータ収集には振動を直接ピックアップする方法と上記プリンターの様にサンプル画像の出力をデータとすることもできます。いずれにしても周波数分析を行う事で原因を特定できるので、振動によるセンシングは効果的な異常検知方法だと思います。
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