119金魚鉢とメッキ槽
子供のころ、お祭りの夜店で金魚すくいをして、その金魚を最初は洗面器に入れて泳がしていたものの、しだいに洗面器では満足できず、金魚鉢を買ってもらい飼育を始めるといった経験を持った人は多いと思います。金魚鉢の底に小石を敷き詰めて、水を8分目まで入れます。竜宮城や藻の置物を入れてみたり、ポンプで空気を送ってみたりと子供の夢はどんどん広がります。(なかなか実現はしませんが)
毎朝、エサを与えます。与えたエサを金魚が食べる様子やフンをする様子を観察することは子供の最大の関心ごとの1つです。しかし、数日するとエサのカスや魚のフンで水が濁ってきます。金魚が水面近くで口をパクパクし始めると、水中の酸素が少なくなったかなと思っては水の入れ替えをします。はじめは金魚鉢の2/3程度の水を入れ換えて済ましますが、小石や金魚鉢の内側が汚れて臭くなると、いよいよすべての水の入れ替えと小石、金魚鉢の清掃をします。そのタイミングが遅いと金魚は長生きできません。一方、全入れ換えと清掃は子供にとって非常に大変な作業です。何とか水が濁らないように子供ながら考えます。エサをやり過ぎない。フンは網ですくう。少しでもパクパクしたらすぐ2/3の水を入れ換える。金魚と金魚鉢の様子を観察しながら飼育します。
同じ様な事をプロセス系工場でも行っています。プリント基板をはじめあらゆる工業製品にメッキは欠かせません。メッキ生成のプロセスは金属イオンが入ったメッキ液をメッキ槽に入れ、メッキされるワークをそのメッキ液に浸け電圧をかけることによりメッキを生成します。ただメッキを均一に精度よく生成するためには、いろいろな工夫が必要となります。メッキ槽に入る前の工程ではメッキ面のバリ、カエリを取り除く工程や洗浄する工程などもありますが、最も難しいのがメッキ槽でのメッキ生成量のコントロールです。
温度、電流密度、イオン濃度さらには生成を促進、抑制する添加材の投入などを適正に管理します。中でも添加材はその性質上、生成を促進、抑制すると同時に副生成物を作りメッキ槽に蓄積されていきます(まるで金魚のフンのように)。したがって、メッキ槽が濁った状態になり、定期的にメッキ液を半分入れ換えたり、場合によっては全入れ換えをしたりします。全入れ換えの場合は、ライン停止が伴い、膨大な費用と時間がかかります。このタイミングを間違えると製品歩留まりが大幅に低下します。メッキ品質を保ちながらメッキ液の全入れ換えを如何に少なくするかといった課題が出てきます。そしてメッキ槽の管理を適正に行うために、IoT AI技術を導入して解決したいといったニーズが出てきています。
最近デパートの金魚売り場で金魚を見ていたら、店員から「この金魚はエサやりの必要がありません。水の中に栄養素が含まれているのです」と説明を聞きました。エサがないからエサのカスも金魚のフンもなく水が濁らないというわけです。
0コメント