118 AIと機械学習とディープ・ラーニング
AI・機械学習・ディープ・ラーニングといった言葉を使って、話し手側の勝手な定義で一方的に話をする場合があります。聞き手側も聞き手側の勝手な定義で話を聞いているので、話がかみ合わない場合があります。このような事は、これに限った話ではありません。特にバズワードに挙げられる言葉はその傾向が強いと思います。ここではAI・機械学習・ディープ・ラーニングの定義、関係性について㈱技術情報協会の「工場・製造プロセスへのIOT・AI導入と活用の仕方」から拾い集めてみました。
①AIにおける機械学習・ニューラルネットワーク・深層学習の関係:機械学習(マシーン・ラーニング)は、AIの要素技術の1つであり、ニューラルネットワークは機械学習のアルゴリズムの1つで、深層学習(ディープ・ラーニング)は多層に構成されたニューラルネットワークである。機械学習とは人間が行っている学習機能をコンピュータで実現しようとする技術であり、昨今のAIと名がついているシステムではこの機能が核となっている場合が多い。機械学習によりコンピュータはデータの中に潜む特徴を学習し、あたかも自ら成長しているように振る舞ったり、新たな未知のインプットに対応したり、時には人間の感覚を超えたアウトプットを見せる。深層学習とは、機械学習の手法(アルゴリズム)の1つであるニューラルネットワークを多層構造に構築したものである。
以上「製造業のものづくり現場におけるAIの導入・利活用による新たな競争優位の獲得」:岩手県立大学 近藤信一氏から抜粋。
②MES(製造実行システム)へ向けた全体最適制御の為に人工知能(AI:アーティフィシャル・インテリジェンス)を活用しようとする機運の中で、機械学習(マシン・ラーニング)によるデータ解析は成果を上げつつある。一方で、深層学習(ディープ・ラーニング)の様な予測結果が出るに至る法則が見えない技術は、製造業で要求される精度に至らない場合や間違いが見つかった後の(同じ間違いを繰り返さないようにするための)修正が困難である事もあり応用例が限られる。~中略~ 機械学習は、過去の経験からしか判断できないという基本特性を持つことを理解すべきである。その中でもディープ・ラーニングから得られた結果から因果関係を求めることは困難であり、従って、ディープ・ラーニングが出した間違った結果を二度と出さないようにする対策は困難を極める。ディープ・ラーニングと機械学習やAIの混同もしばしばみられる。(図略) ディープ・ラーニングは機械学習の一つであり、機械学習はAI手法の一つである。因果関係を推定できる機械学習手法は存在する。
以上「製造業におけるIoTからAI(データ解析)に繋げる為の技術者教育と組織の作り方」:住友金属鉱山㈱ 佐藤健司氏から抜粋。
③機械学習とディープ・ラーニングの違い:人工知能の一つとして機械学習があり、機械学習の1つ手法としてディープ・ラーニングがあるという関係を表したものだ。(図略) ディープ・ラーニングとはなにかを解説する際に、このような集合関係で説明されることが多い。しかし、この集合関係だけで機械学習とディープ・ラーニングの違いを知ったような気になってはいけない。実は、機械学習とディープ・ラーニングの違いには次の3つのポイントがあり、集合関係はこのうちの定義1でしかない。
定義1:ディープ・ラーニングは、機械学習の一部である。
定義2:ディープ・ラーニングは、機械学習の中で隠れ層(Hidden Layers)が多層化して深くなっているもの。
定義3:機械学習はルールベースの計算で、ディープ・ラーニングはブラックボックス。
以上「ディープ・ラーニングを使った以上検知の方法」:㈱システムインテグレータ 梅田弘之氏から抜粋。
共通点は、ディープ・ラーニングは機械学習の1つで、機械学習はAIの1つであるといった点です。
たとえば、プロセス工場にAI・機械学習・ディープ・ラーニングを導入しようとしたら、次の様な表現になるのではないでしょうか。金属の線材を製造している現場において、最終検査工程ではキズ、コンタミ、フクレなどの識別判定を現在も作業者の官能に頼っています。これを自動化するためにディープ・ラーニングを使って解決しようと思います。並行して不良の原因とその発生プロセスを分析するため、ディープ・ラーニングで識別判定した結果を目的変数に、製造工程の温度、圧力、電流値などを説明変数として機械学習させ分析します。その結果をもとに不良対策を立てます。以上のAI技術の導入により、不良の流出を防ぐと伴に不良を大幅に低減することができます。
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