114 IoT AIを活用した品質改善(解説11)
㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は11回目です。
<抜粋:異常予兆の検知におけるIoT/AI活用技術の課題1>
IoT技術を活用したデータ収集:既存の工程に配置されている設備は、古い設備であればあれほど、データを取り出すためのインターフェース機能を持たず、また、データは7セグ表示器、円形メータなどを使ってその設備を使用する人に向けて示される場合が多い。そのため、設備の稼働状態のデータを収集しようとすると、おのずとマニュアルで読み取るためのデータをデジタルデータとして取り出さなければならないケースが出てくる。最近の画像処理技術では、こうしたデータ収集が可能になってきており、前記のモデル工場では当社のデータ収集ツールAMRを使用した。
製造現場でのデータ活用が進むにつれ、このような方法でのデータ収集のニーズが高まることが期待されるが、製造現場への本格的な導入に向けては、2つの課題がある。
1つ目は、読み取り可能な計測器の種類を増やしていくことある。工場には様々な種類の計測器が存在する。AMRの場合、従来品では7セグ表示器と円形メータの読み取りが可能であった。これらは一般に製造設備に使用させる頻度が高い計測器であるが、今回対象としたモデル工場では重要要因を計測する計測器の中の1つにフローメータ(流量計)があった。そのため、新規にフローメータ読み取り機能の開発を行い、読み取り可能な計測器を3種類とした。しかしながら、7セグ表示器でも液晶タイプは読みにくい、円形メータでも表示器に対して文字が占める面積によっては読み取れない、といったトラブルも確認され、読み取り性能が新たに課題となっている。今後本モデル工場での実証実験を通して、この課題に取り組んでいく。
2つ目は、工場環境への対応である。工場内にカメラを取り付ける際、設置場所の広さ、照度、雰囲気(温度、湿度、酸、アルカリなど)の状況を把握し、カメラへの影響を考慮した取り付けを行う必要がある。様々な環境に適合できるように、現在、カメラやその取り付け手法などのバリエーションを検討している。
<解説>
ここで使用されたデータのなかには、1日2,3個しか収集されていない工程もありました。1日100ロット流れる製品のデータとしては明らかに不足していると思います。その工程の1つとして定温槽がありました。この定温槽のアナログメータへカメラを設置し、24時間撮影しAMR(アナログメーターレコグナーザー)を使い1分間隔でデータを収集してみました。その結果、定温槽を一定に保つサーモスタットのスイッチングの様子や、定温槽に日に1回投入される薬液の影響で温度が変化すことが分かりました。1日の温度変化の詳細データを使えば、予測の精度も改善されると思います。
AMRはカメラでメータを撮影しなければいけないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分)に対して工夫する必要があるなどの課題はありますが、合理的なデータ収集であることには間違いないと思います。
AMRは旧式設備のメータをカメラで撮影し、デジタルデータ化して統一データ形式で出力します。それがどのメーカーの円形針メータであっても、7セグ表示器であっても、フロートメーターであっても同じ形式で出力されます。言い換えれば、設備メーカーや、設備の新旧に依存することなく必要なデータを収集すれば、統一データ形式でデータベースに格納できることになります。ゲートウェイの機能は必要なくなります。
今後、データ統合、データ分析とデータ活用を進めるに当り、非常に価値ある特徴です。
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