110 IoT AIを活用した品質改善(解説7)
㈱技術情報協会から書籍「工場・製造プロセスのIoT・AI導入と活用の仕方」が出版されました。その中の「プロセス系工場でのIoT/AIを活用した品質改善への取り組み」について執筆しましたので、数回に分けて解説したいと思います。今回は7回目です。
<抜粋:データ統合>
収集したデータは、そのままの状態では分析することができない。これを分析にかけられるように処理することをデータ統合という。具体的には、個々のデータをクレンジングし、クレンジングした複数のデータの紐付けを行う。データ活用のプロセスの中で最も厄介な作業であり、当社ではこれを自動化したツール(Data Mediator)を開発して使用している。
クレンジングでは、すべてのデータが同じ情報量、同じ特徴となる様にデータを加工する。収集したデータには、欠損、表示形式の不備などが含まれることが多く、例えばデータの欠損箇所がある場合は、そこに前後のデータの平均値を入れたり、前のデータと同じ値を入れたりすることでデータを補完する。データの紐付けは、データの中に加工物のロット番号、加工日時、加工条件または加工結果の情報が揃っていると実行することができ、加工物単位でトレーサビリティーを確立する。
データは自動収集、マニュアル収集、レトロフィット技術による収集と様々な方法を介して収集され、出力される。このように性質の異なるデータの紐付けを行うためにはデータやデータフォーマットに一定のルールを設ける必要がある。そこで、これを実現する手段として、私たちはデータフォーマットの標準化に取り組んだ。過去に収集したデータを使用する場合はそれらを標準フォーマットに変換し、また、今後取集するデータは標準フォーマットを適用して蓄積していく。多くの製造現場では、従来はデータを局所的にしか活用していないためデータフォーマットが標準化されておらず、これは一時的に非常に大変な作業となる。しかし、今後、製造現場で幅広くデータを活用していくためには有益な取り組みといえる。データを自動的に標準フォーマット化する方法としては、レトロフィット技術の活用が挙げられる。通常は設備が自動でデータを収集している計測器をカメラで読み取り、デジタルデータとして取り出す。AMRを使用した場合、データは標準フォーマットの形式で出力されるので、フォーマットの変換が不要となる。
<解説>
開発したData Mediatorは、ゲートウェイと呼ばれるソフトウェアの一種です。各設備から生成されたデータは、このゲートウェイを通ってデータベースに格納されます。そのデータを使って各種の分析、解析を行います。しかし、市販のゲートウェイの場合は限られたメーカーの設備でないと、データを変換して統一フォーマット化できません。現状製造ラインで稼働している旧式の設備の場合には、設備ごとにゲートウェイを作る必要があります(上記はこれに当たります)。工場の情報システムの部門で対応できる場合は問題ないと思います。
AMRは旧式設備のアナログメーターをカメラで撮影し、デジタルデータ化して統一データ形式で出力します。それがどのメーカーの円形針メーターであっても、7セグ表示器であっても、フロートメーターであっても同じ形式で出力されます。言い換えれば、設備メーカーや、設備の新旧に依存することなく必要なデータを収集すれば、統一データ形式でデータベースに格納できることになります。ゲートウェイの機能は必要なくなります。
AMRはカメラでメーターを撮影しなければいけないので、工場の環境(照明の変化や振動などによるノイズ成分)に対して工夫する必要があるなどの課題はありますが、合理的なデータ収集であることには間違いないと思います。
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