088プロセス系工場のIoT(その1)
IoTを使って生産性の向上や品質改善の活動に取り組みたいと考えている工場経営者は多いと思います。合わせて、経営者は今ある設備を有効に活用し、投資を極力抑えたいとも考えていると思います。一方、大手電機企業はIoTをキーワードに、大がかりな通信システム、情報システム、さらにはものづくりのプラットフォームを工場へ導入したいと考えています。そのため、あれもできる、これもできると言って提案してくると思いますが、実施例が乏しいため、なかなかビジネス化へは至らないようです。
工場の設備投資は年間収益の数パーセントくらいの枠だと思います。IoTでどのくらいの効果が出るかを算出するのは難しく、大規模投資をするためには勇気が要ります。よって経営者は先ほどの枠でまずスタートさせたいと考えていると思います。プロセス系の工場はほとんどが設備化されており、製造条件、設備条件が規定値内にあるか計器類を使って監視して製品を24時間製造します。データは人が計器を読み取り取集するマニュアルデータと設備内に自動的に保存される設備のログデータがあります。
現状ある一定の生産性、品質が確保されている稼働中の設備を停止してまで、IoTを導入することはかなりのリスクとなります。さらに、旧来から使っている設備は投資の回収が大半は終わっているため、コスト面でもかなり有利となります。(新規システム導入にかかる費用を考慮すると) でも、現状のままでは将来を見据えた経営はできないといったジレンマに経営者は陥っていると思います。
ここでプロセス系工場の品質改善のPDCAサイクルについて整理します。
<旧来の現場中心のPDCA>
P:開発部門から提示され製造条件に基づき、各設備をチューニングします(温度、圧力、電圧、電流、濃度、時間など) D:実際に製造工程に沿ってワークを流します C;製造条件通りになっているか、計器類を定期的に読み取ります。X-R管理図他QC7つ道具などを使って製造状態を監視します。A:リミットの逸脱や、偏った傾向がある場合は、対策を考え、対象となる設備を再チューニングします。
<SPCを使ったPDCA>
PとDは前記と同様です。C:前記に加え、最終検査工程の結果と相関が強いデータ、または当初考慮されていなかった工場内の環境データ(気温、湿度、振動など)や購入部材のデータを選定して、統計処理します。A :Cの結果を含め製造条件を再設定します。
<IoT AIを使ったPDCA>
前記と同様ですが、データは自動で収集されサンプリング数も増えます。AI分析により最終検査を待たず、検査結果の予測値を使って、チューニングのよしあしがすぐにわかるようになります。
IoT AIを使った品質改善のPDCAサイクルは、旧来方式やSPC方式を包含しますが、課題としては予測値の精度です。この精度を高めるために必要とされるのが、データの品質です。センシングの内容、サンプリング数など工夫が必要です。
プロセス系工場のIoT(その2)では、従来の設備の稼働を停めることなく、品質の高いデータの採集技術とデータ統合、分析の流れについて記載します。
0コメント