080データ活用の取り組み(その4)
ものづくりの普遍のテーマがQCD+ESであることは間違いありません。中でも最大の関心事は、いかにコストを削減するかであると思います。いかに原材料費を削減するか、人件費を削減するか、仕損費を削減するか、エネルギー費を削減するか、労災費用を削減するか、だと思います。
データを活用して「見える化」しただけでは、当然、具体的な費用削減につながらないわけで、少なくとも、こういった考え方で活用すれば理屈上は何パーセントの費用削減が期待できるはずです、といったストーリーを考えておくべきです。
たとえば、製造リードタイムが長いプロセス工場の場合、設備の条件設定を行っても、その結果が、2~3週間後にならないとそれが適切であるか否かが分かりません。適切でなければ再設定が必要となります。この時間のロスが、材料のロス、人権費、エネルギーのロスにつながります。設定条件データを活用して、製品の品質予測ができれば、良否判定にかかるリードタイムを1日に削減できます。といったようなことが可能となります。
たとえば、ある工場では既に歩留まり、直行率とも十分に当初の計画を上回っているとしたら、過剰品質の可能性があるのかもわかりません。歩留まり、直行率を落とさないで、SMTのはんだ印刷のはんだ量を10%削減する条件をデータ解析から求めることも可能だと思います。
たとえば、SMTラインの実装検査装置の虚報の発生率を半分に減らすことができたら、後工程の人手による目視作業が半分になります。前工程のはんだ印刷のデータや実装のデータから不良を予測することも可能だと思います。極端に言えば、工程内にある検査工程は、前工程のデータ分析で予測できるので、将来的に削減できるのかもわかりません。
以上のたとえを実現するためには、大きな課題があります。それが予測精度です。予測精度が高くなければ、上記のたとえの実現はありません。予測するためには過去の説明変数(製造条件、製造状態)と目的変数(検査結果)データを使って、AIに学習させて予測モデルを作成します。その予測モデルを基準に品質レベルを予測します。予測モデルの信頼性を向上すためには、いかに品質の良いデータ(サンプル数、サンプリングレート、ノイズレス)をAIに学習させるかです。
将来のものづくりのあるべき姿を実現しようと考えたら、データの活用が鍵になるのは、間違いありません。いかに良い製品を作るかと合わせて、いかに良いデータを作るかが、今後の生産技術者の役割となりそうです。
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