072ツインピークス
自動化の設備を新規開発して、実際の製造現場で稼働させる前に、実際の部品を使って設備を評価します。目標の工程能力に達成するまで、エラーの発生毎に原因を追究し、再チューニングします。これを何回か繰り返します。ティーチングの位置ずれであったり、ロボットが部品をつかむ時のばらつきであったり、実際の部品で稼働させるとチューニングの工数は膨大になることが頻繁に発生します。実は、エラー発生の原因のなかには、部品に起因するエラーも数多くあることも事実です。
以前、ハードディスクの自動組立ラインの開発、導入を手掛けたことがあります。現地に設置して本格的運用に向けてチューニングをしている中で、100回に1回程度どうしてもネジが着座しないエラーが発生していました。事前の自動ネジ締機の評価では、そのようなエラーは発生していませんでした。原因がわからないまま、ネジ締めの位置の調整やトルク調整を繰り返し行いましたが、一向に改善されませんでした。
そこでネジ自体に問題がないか調査しました。ネジが着座していない不良サンプルを樹脂で固め、断面が見えるように削り、工具顕微鏡で観察してみました。結果、おネジの山の先端が2つに割れていることが分かりました(ツインピークス)。めネジがおネジの正しい谷に入らないで、この割れ目に噛み込んで着座できなかったことが判明しました。
このツインピークスは転造ネジ特有の現象です。転造ダイスで成型する過程でネジ山が2つから1つへと変化しますが、転造量が少ないと2つ割れの状態のままネジとなります。人間がネジ締めを行う場合には、着座する前に硬くなると、当たり前のごとく1回ネジを緩め、再度締め直すといった工夫をしています。以降ネジ締機のシーケンスに、着座前にトルクアップしたら、巻き戻し、再度ネジ締めといったリトライ機能を追加しました。
以前、SMTラインのチョコ停の原因を探るため、ビッグデータ分析を実施しました。SMTラインの各設備のイベント情報、エラー情報のほか、部品の情報などを収集し、分析した結果、あるチップ部品との相関が強く出る傾向がみられました。そのチップ部品を電子顕微鏡で観察してみました。通常であれば、チップ部品の形状は羊羹型(直方体)をしていると考えられていたものが、そのチップ部品はかまぼこ型をしていました。チップ部品を搭載するロボットの吸着コレットが、それに対応しておらず、吸着ミスを頻発していたようです。
以上の事例で分かるように、組み立て系の製造ラインにおいては、ワークや組み付け部品、締結部品について、十分理解しておく必要があると思いました。従来の部品では大丈夫だったとか、人手作業では問題なくできていたとしても、そこには隠れた要因、ノウハウが潜んでいます。
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