040養生
養生という言葉を聞いたことがあると思います。引越屋さんが家具の搬出搬入の際に、その通路となる廊下、壁に搬送物が当たって傷がつかないように、保護シートを敷設することを養生ということがあります。製造設備を工場へ導入する際にも養生します。
(クリーンルーム内に設備を搬入する場合)
クリーンルーム仕様の設備を、製造現場の稼働中のクリーンルームに搬入し、試運転して現地の製造技術部門へ引き渡したことがあます。設備メーカーで自動組立機能の評価とクリーン度のチェックを行いOKとなると梱包をして、搬送します。この梱包、搬送は通常の環境で行いますので、ゴミ、コンタミが設備に付着します。現地のクリーンルームに、この状態で設備を搬入すると、クリーンルーム全体が汚染されてしますので、養生します。
クリーンルーム内にはクリーンブースといったテントを用意します。設備はクリーンルームの前室でゴミ、コンタミをよく拭き取ります。その後、クリーンブース内に搬入し、電源を投入してランニング運転を1日ほどします。動作することでゴミが飛散しますが、クリーンブース内には清浄な空気を取り込み、汚染された空気を排出する仕組みがあります。もちろん、設備もブロアーで設備内部を吸引しているのでゴミの発生はありません。
ランニング運転が終了して、クリーン度に問題がなければ、クリーンブースが取り除かれます。クリーンルーム内に設備が設置された状態となり、設備が通常稼働されます。以上、この一連の作業を養生といいます。
(冬期に設備を搬入する場合)
以前、ものづくり工房に各設備メーカーの加工機を搬入した経験があります。通常、冬期に設備を搬入するときは、冷え切った設備を暖房の効いた室内にそのまま入れると結露してしまうので、設備全体をビニールシートで覆い、半日ほど室内に放置しておき、徐々に室温に戻します。この一連の作業も養生です。最近の設備は多くのプリント板ユニットが搭載されており、結露が原因でショートする場合があるので、この養生は重要です。
冬のある日、同じものづくり工房に1台の設備が搬入されました。真空成型機という設備で、薄いプラスティックシートを温めて柔らかくし、型に密着させて成型する設備です。(お祭りの出店で売られているお面や卵をパッキングするケースなどを成型する設備)型に密着させるため、真空機能を内蔵していました。その設備メーカーは先ほどの養生をしないで室内に持ち込みました。たまたま電源工事が遅れていたため、搬入時には電源を投入することができませんでした。放置したまま2週間がたちました。すでに設備は室内の環境温度と同じであり、結露の心配もなかったので、電源を投入して、スタートスイッチを入れましたが、真空成型機は動きませんでした。
メーカーに調査してもらった結果、真空ポンプのベーン(羽根)とケーシングの隙間に錆が発生し、ポンプが動かなかったとのことでした。メーカーからは、室内の湿度が高すぎるのではないかと言われましたが、室温湿度とも通常通りで、ほかの設備は何の問題もなく稼働いていました。
そこで、「搬入時に養生しないで冷えた設備を室内に持ち込んだ際、結露がポンプ内のベーンとケーシングに発生して、それが原因で錆が発生したのではないですか?」と尋ねると、メーカーは納得して修理してくれました。
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