011ハーモニックドライブ®(その2)
003ハーモニックドライブ(その1)で、概要については既に触れたのでここでは割愛します。今回のテーマはハーモニックドライブの剛性(ロストモーション)についてです。
一般的なギア列においては、動力伝達をスムースに行うため、ギアとギアのかみ合いにバックラッシュというガタを持っています。しかし、ロボットをはじめとして自動化の設備の場合、逆方向へ移動する機構がほとんどで、このガタが位置決め精度に影響することがあります。そこで、このガタを低減するため、ばね等で与圧を与える機構を組み込むことがあります。
一方、ハーモニックドライブは構造上、ガタは発生しませんが、回転が逆方向になる時、ロストモーションといった剛性が極端に小さい状態が発生します。ガタの場合は、そのガタの範囲のどこで停止するか(位置決めされるか)わかりません。ハーモニックドライブの場合、剛性は小さいものの位置決めされます。
この性質を利用した代表的なロボットが水平関節ロボットのSCARAです。SCARAは水平面内での稼働に限られていますが、部品を組み立てるピック&プレイス機能としては、理にかなった構造となっています。
組立に必要な基本機能は部品の挿入です。(文献によっては組立の挿入のことを装入と書いてあるものもあります) ワークの穴に対して、ロボットハンドで掴んだ部品がちゃんと挿入できるかです。当然ワークにも部品にもロボットハンドにも誤差があります。普通穴側にも、部品の先端にも面取りが施され、入り勝手がいいようになっています。しかし、ガチガチの剛性を持ったロボットの場合、いくらは入り勝手が良くても位置がずれていたら挿入できません。ハーモニックドライブを搭載したSCARAロボットは先ほどのロストモーションの性質を利用して、人が手で挿入するように柔軟に部品の挿入ができるといった訳です。
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